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日本マイクロソフト SQL Serverの攻勢 ギアを一段上げる
2017/06/08 09:00
週刊BCN 2017年06月05日vol.1680掲載
日本マイクロソフト(平野拓也社長)は、ISVパートナー向けに、同社のデータベース(DB)ソフト「SQL Server」への対応・移行を促すべく、新たな支援施策をスタートさせた。ターゲットとしているのは、DBソフトの巨人であるオラクルのユーザーだ。近年、激しさを増しているデータプラットフォーム領域での両社の攻防の行方は――。(本多和幸)
ISVからの問い合わせが急増
日本マイクロソフトの新施策は、パッケージソフトの動作環境に「Oracle Database」をはじめとする他社DBを採用しているISVが対象で、SQL Serverに動作環境を移行する、もしくは動作環境の一つとしてSQL Serverにも対応することにした場合に、最大300万円相当のSQL Server対応/移行支援サービスを無償提供する。さらに、先着30社を対象に、SQL Serverに対応/移行したパッケージのマーケティング支援についても、200万円相当のサービスを日本マイクロソフトが無償提供するというもの。50万円相当のマーケティング支援無償提供というメニューもラインアップしており、これは先着30社から漏れても利用することができる。佐藤 久
業務執行役員本部長
対オラクル攻勢は“継続施策”
日本マイクロソフトがDBについてオラクルをターゲットに施策を打つのはこれが初めてではない。一昨年、Oracle DBのライセンス体系に変更があり、エントリークラスのライセンスがその上位クラスに統合され、結果的に最低価格が3倍に値上がりしたかたちになった。これを好機と捉えたマイクロソフトは、昨年4月、Oracle DBから「SQL Server 2016」に移行するユーザーに、無償でライセンスを提供するという思い切った策を打ち出した。これに伴い、国内SIパートナーが移行を支援する体制も整えた。佐藤本部長は、「Break free from Oracleというキャッチフレーズを掲げてやってきたこの施策は大きな反響があり、オラクルからのマイグレーション案件が現在80件ほど進行中、4件はすでに終了している。ただし、この施策で対象としてきたのは、スクラッチ開発やSIを含むプロジェクト単位の案件。ISVからの問い合わせを受けて調べてみると、ISVパッケージがSQL Serverの選択肢を確保したいというニーズも大きいと判断した」と振り返る。つまり、昨年打ち出した施策とは別の領域を攻めるための、新たな対オラクル施策を今回打ち出したといえるのだ。
3年後に市場シェア60%を目指す
また、ISVパッケージ市場には、「クラウド対応のニーズが高まっている」(佐藤本部長)という事情もある。オラクルは今年、AWSとAzure上でOracle DBを使う場合のライセンス体系を変更、実質的に値上げしており、DBのクラウド対応については、マルチインフラではなく、自社のクラウドインフラに囲い込む方針を鮮明にしている。日本マイクロソフトは、これも同社にとっての追い風になり、Azureのユーザー拡大につなげることができると考えている。日本マイクロソフトの独自調査によると、すでにISVパッケージの50%はSQL ServerをDBソフトとして採用しており、オラクルが30%、その他が20%だという。佐藤本部長は、「3年後には、オラクルのシェアを奪うかたちで、SQL ServerとAzure SQL Databaseを合わせ、ISVパッケージ向けDB市場の60%のシェアを獲得したい。調査により、500パッケージほどは市場に存在するのを認識していて、そのうち360くらいにはすでにコンタクトもしているので、一件一件つぶしていけばいいだけ。シェア60%は十分に達成可能な目標だと考えている」と話す。
一方で、DBソフトを含む業務アプリケーションのデータプラットフォーム機能を提供する商材として、SAPのインメモリプラットフォーム「HANA」が存在感を高めているが、日本マイクロソフトは、HANAについては“協業”の姿勢を示しているのが興味深い。佐藤本部長によれば、「Azureをインフラとして使うSAPのERP案件なども増えていて、そのプラットフォームとなるHANAも、まずはAzure上で使ってもらうことが最優先。DBが何かは気にしない」という。マイクロソフトやオラクルの戦略が、単にDBの覇権争いにとどまらず、それぞれのクラウドビジネスにおける成長性にどんな影響を与えるかも注目したいところだ。
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