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ファーウェイ 2017年の経営戦略 パブリッククラウドなどへ投資強化
2017/05/11 09:00
週刊BCN 2017年05月08日vol.1676掲載
毎年100~200億ドルを投資 パブリッククラウドを重要視
HAS 2017では、徐・輪番CEOが基調講演を務め、17年の経営戦略として研究開発(R&D)投資を強化する方針を示した。ファーウェイは16年度(16年12月期)、総売上高が前年度比32%増の5216億元(約8兆7316億円)、純利益が同0.4%増の371億元(約6211億円)を計上しているが、売上高の14.6%は研究開発に投じている。過去10年間の累計投資額は、3100億ドルに達する。今後について徐・輪番CEOは、「毎年の研究開発投資額は100~200億ドルを維持する」と明言した。徐直軍
輪番CEO兼取締役副会長
また、徐・輪番CEOは、市場が拡大するIoTやAIなどの領域でも投資を拡大し、技術革新を推進する姿勢を示した。IoTについては、「アプリケーション、デバイスの開発・再販、エンドツーエンドのシステム・インテグレーションには手を出さない」と明言し、あくまでパートナー企業との連携を通して事業を拡大する姿勢を示した。
法人事業の成長が加速 パートナービジネスを強化
馬悦
法人向けICTソリューション事業部
バイス・プレジデント
ファーウェイの16年のEBG売上高は、前年度比47.3%増の407億元(約6813億円)。事業別では、もっとも大きい伸び率を示している。EBGでは、18年度末に売上高を100億ドルに拡大する目標を掲げている。
1兆ドルの巨大市場 映像関連ビジネスに注力
また、ファーウェイは、通信事業者向けネットワーク事業の新たな取り組みとして、映像関連ビジネスに力を注いでいく方針を示した。HAS 2017では、デジタルトランスフォーメーションやクラウドサービスと並び、昨年はなかった映像関連ビジネスのセッションも設けられた。背景にあるのは、最大の顧客先である通信事業者が、ビジネスモデルの転換にあたって映像サービスに注力していることだ。ファーウェイの資料によると、グローバルのエンタテインメント映像市場は6500億ドル、産業用映像市場は180億ドル、コミュニケーション映像市場は3500億ドルに達する見込みで、商機が拡大している。実際、セッションで講演した中国聯通広東の担当者は、「ビデオはキャリアのコアサービスの一部になってきている」と話し、自社の映像サービス「沃視頻」を紹介した。
丁耘
取締役兼プロダクト・
ソリューション・グループ・
プレジデント
――パブリッククラウドに力を注いでいるが、法人向けビジネスの領域では、(顧客先である)通信事業者との競争も生じることになる。ファーウェイは、自らの立場をどう位置づけているのか。
徐 われわれは、もともと法人向け市場で製品・ソリューションのプロバイダの位置づけだ。一方、通信事業者は、自身の製品とソリューションをもっていない。そのため、ファーウェイと通信事業者は相互補完の関係になることができる。実際に欧州では、ドイツやスペイン、フランスなどで通信事業者と協力し、共同でパブリッククラウドを展開している。発展途上国では、通信事業者の能力に限りがあるため、われわれが自らパブリッククラウドを構築することもあるが、その場合もパートナーとして通信事業者と連携し、ユーザーにサービスを提供している。
――パブリッククラウドの領域で、AWS(Amazon Web Services)やマイクロソフトにどう立ち向かっていくのか。
徐 AWSやマイクロソフトは、米国などの先進国で大きなプレゼンスを有している。だからこそ、われわれは欧州では現地の通信事業者との協力によって、安全で信頼できるパブリッククラウドを提供しているのだ。このことは、欧州の多くの企業が、われわれのパブリッククラウドを選ぶ一つの理由になっている。
一方で、発展途上国でファーウェイは高いプレゼンスをもっている。長年にわたって蓄積してきた優位性を発揮することで、AWSやマイクロソフトと競争できる。
――競争が激しい法人向け市場では、IBMやオラクル、アクセンチュアなども競合になるのではないか。
徐 法人向け市場で、このようなIT企業はわれわれのライバルとはいえない。むしろ、IBMやアクセンチュアなどは、われわれのパートナーだ。ファーウェイは、自らを製品のプロバイダと位置づけており、IT企業との協力を通してサービスを提供している。
システムのクラウド化などの通信事業者向け市場でも、IT企業との競争はほとんどない。これには、複数の要因が存在する。一つは、通信事業者はどこも仕入部門の力が強いため、IT企業がそれほど儲からないということ。二つめは、通信事業者のシステム構築はカスタマイズが多いうえに、変化も速いこと。三つめは、通信事業者向けに構築するCRMなどのシステムが、その他の業界に拡張しにくいことだ。
――人工知能(AI)領域では、どのような取り組みを進めるのか。
徐 今後は、すべての製品とサービスにAIを盛り込んでいく。まずは、機械学習を通じて、グローバルで多発するネットワークインシデントへの技術価値を発揮したい。われわれは現在、よりスマートなネットワークを実現するAI「網絡大脳」を構築している最中だ。
クラウドの観点でいえば、プライベートクラウドであれ、パブリッククラウドであれ、われわれはAIをサービスに組み込んで、企業を支援していく。
――最近、テンセントや中国電信などは、相当な安値で中国政府のプロジェクトに入札し、受注を獲得している。ファーウェイの中国政府向けビジネスのモデルはどのようなものか。
徐 ファーウェイと中国政府との協力モデルは単純だ。一つは、われわれが製品をパートナーに提供し、パートナー経由で政府のニーズを満たすこと。もう一つは、われわれが直接コンピューティングリソースを提供して、政府のニーズを満たすことだ。(質問で挙がった)他社と同じようなやり方はとらない。
――上場は検討しているのか。
徐 まだ考えてはいない。
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