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日立アイ・エヌ・エス・ソフトウェア 病院向けLumadaソリューションを提供 経営指標をデータ分析

2017/04/27 09:00

週刊BCN 2017年04月24日vol.1675掲載

 横浜市に本社を置く日立製作所のグループ会社、日立アイ・エヌ・エス・ソフトウェア(日立INSソフト、任田信行社長)は、従来得意とする情報通信や公共分野などの基幹ソフトウェア開発に加え、BI(ビジネスインテリジェンス)などの他社製品を使ってサービス型のソリューションを拡充している。最近では、日立のIoTプラットフォーム「Lumada」(ルマーダ)と連携する特定産業向けのサービスを複数確立。日立グループや同業他社のシステムインテグレータ(SIer)との「共創型」で販売拡大を目指している。(取材・文/谷畑 良胤)

QlikViewを使って簡単構築

 日立INSソフトは、日立グループのSE子会社として1986年に創業した。現在は、情報通信、公共分野を中心に金融、産業・流通、ヘルスケアなど、特定分野の基幹系ソフト開発を得意としている。最近では、受託ソフト開発に加え、インメモリ型BIプラットフォーム「QlikView」などの汎用ツールを利用し、得意分野を中心としたITシステムの提供を拡大している。昨年度(2017年3月期)からは、創業30年を契機に、Lumada連携のソリューションを強化し、1社単独ではなく、グループ子会社や同業他社、ソフトベンダーなどとの連携を本格化し、販売拡大に取り組んでいる。
 

石木康之
経営統括本部営業本部
本部主管

 日立INSソフトがQlikViewの販売パートナーになったのは、08年12月からで競合他社に比べ早く、「企業内の膨大なデータを分析、可視化して企業価値にするソリューションで多くの実績がある」と、経営統括本部営業本部の石木康之本部主管が語る通り、広範な企業ニーズに応えるためのサービスや開発支援、分析に必要な教育などのメニューをつくってきた。こうした取り組みや導入実績が評価され、12年4月には開発元のQlikTeck社の「Special Recognition Award」を受賞している。

 今後は、より広範に同社製品を拡販するため、QlikViewで積み上げた技術・ノウハウを生かし、得意分野向けの分析ソリューションをLumadaと連携して提供する体制を整える。その第一弾として構築したのが、院内外のあらゆるデータの統合と集計・分析をし、医療機関の経営・診療状況の柔軟な分析環境を提供できる病院向けDWH(データウェアハウス)ソリューション「スマートアナリシス/MI」だ。

 スマートアナリシス/MIは、病院経営者向けに経営の最適化を、医師やコメディカル(医師の指示の下に業務を行う医療従事者)向けに医療の質向上に向けた環境を提案できる。従来、医療向けには、各法人にカスタマイズしたソフトを開発し提供してきたが、スマートアナリシス/MIがあることで、グループ会社などの販売パートナーと共同で導入できる。

 石木本部主管は、「各法人の要望に応じた機能拡張が容易だ。スマートアナリシス/MIだけで、3年後には、年間5億円の売り上げを目指す。現在は、オンプレミス型が中心だが、クラウド型でも提供する。早期にクラウド型を3分の2まで拡大する」と、受託ソフト開発やソフトライセンスだけでなく、クラウド型で提供することでストック型のビジネスを拡大するねらいもあるという。

医療向けにIoTを関連付け

 医療機関向けに特化したスマートアナリシス/MIは、医事会計、電子カルテやオーダリング、各科・部門の医療情報データを統合することで、経営指標分析や医療の質の分析、地域医療分析などで病院経営の質を高められる。多くの医療機関では経営の指針として科別収支や患者単価、在院日数などの基本的な指標を用いて分析している。しかし、「診療報酬改定や地域医療構想への対応などで、これまでの経営管理手法だけではマネジメントが難しくなっている」(石木本部主管)。従来も同社は、病院向けに情報システムを提供していたが、「“Lumada的”にサービスを構築した」(同)のが、同ソリューションだ。

 基本的には、院内の診療行為明細などの医事や電子カルテ、手術や検査などの記録がある各科・部門、人事給与などを扱う管理などから、データを吸い上げ医療向けにカスタマイズしてQlikViewで分析する。これだけでなく、IoTの仕組みとして厚生労働省が公開している医療機関や疾患、術式ごとの年間件数、在院日数などのオープンデータを、院内データとマージし、毎日指標を更新できる。また、将来的には、他の近隣病院とデータ連携させ、複数病院で分析後のデータの相関関係をみたり、地域医療の整備などに役立てる。

 同社は、スマートアナリシス/MIの構築にあたり、病院などと実証実験を実施しベンチマークしてきた。「患者単価や病床稼働率を改善でき、病院経営戦略立案にかかる時間を短縮できる効果が現れた」(石木本部主管)と、実証実験を経てソリューションとして市場投入を決めた。病床数が200~300床程度の中規模以上の病院を対象に売り込む。

 導入に際しては、実際のデータを使ったサンプリング調査を実施し、事前のコンサルティングも行う。システム規模にもよるが、開発開始から稼働までは2か月程度。石木本部主管は、「日立グループ内には、(競合他社のNECや富士通などと異なり)医療機器と医療情報を扱う会社がある。グループ全体でシナジーを出せる領域だ。病院向けに限らず、応用モデルを出していく」と、横展開を検討している。
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外部リンク

日立アイ・エヌ・エス・ソフトウェア=http://www.hitachi-ins.com/