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コンピュータソフトウェア協会 いよいよ本格的に回り始めた“起業家が起業家を育てる”制度 制度のスタートから3年目に突入

2017/03/23 09:00

週刊BCN 2017年03月20日vol.1670掲載

 米シリコンバレーのように、成功した起業家が新たな起業家を育てていく。この好循環をつくりだすために、コンピュータソフトウェア協会(CSAJ)が2015年6月に始めたのが、「CSAJスタートアップ支援制度」である。当初はスマートフォン向けアプリが多かったが、最近ではAI(人工知能)やIoTに取り組むスタートアップ企業が増えているという。17年度は、4月1日から支援先となるスタートアップ企業の募集を開始する。(畔上文昭)

アプリからAIやIoTへ

笹岡賢二郎
専務理事

 CSAJスタートアップ支援制度は、同制度に賛同した投資家による資金でファンドをつくり、スタートアップ企業を支援することを目的としている。ファンド名は、「CSAJスタートアップファンド投資事業有限責任組合(CSAJファンド)」。スローガンは「本気で日本のITベンチャーを育てる」。出資規模は、2億8500万円で、出資期間は5年を想定。ファンドの存続期間は7年を想定していて、最大3年まで期間を延長する可能性がある。

 これまでの投資実績としては、出資企業数が14社で、投資金額は8700万円。加えて、投資委員会で3社の投資が新たに承認されたため、確定すれば17社、1億1160万円の規模となる。

 CSAJファンドで投資してきたスタートアップ企業の傾向について、笹岡賢二郎・専務理事は、「当初はスマートフォン向けのアプリが多かったが、昨年からはIoTやビッグデータといった企業向けのシステムやサービスへとシフトしてきている。AI関連も増えてきた」と語る。また、しっかり練られたビジネスモデルがあるのも、最近の傾向だという。

先輩起業家が追加出資

 CSAJファンドでは、出資したスタートアップ企業の多くが順調に成長していることから、現時点では含み益が出ている。

 「CSAJスタートアップ支援制度は、シリコンバレーを参考に、シード期に発生しがちな問題の解決策を指導するなど、単なる出資に終わらないように取り組んでいる。例えば、ユーザー数を早く多く確保するために、スタートアップ企業は商品やサービスの価格設定を抑える傾向にあり、まずは無償でというケースも多い。その場合、ユーザー数が増えてから有償化することになるが、製品やサービスに自信があるなら、しっかりと適正価格を設定したほうがいい場合もある。そうした“価値”についてもアドバイスしている」と、笹岡専務理事はCSAJファンドが好調な理由を制度の中身にあると考えている。

 出資先への指導は、先輩起業家がメンターとして担当。自身の経験を踏まえたアドバイスが、起業時の課題解決に役立っている。CSAJファンドでは追加出資を行わない方針のため、なかには、メンターから追加出資を受けるケースも出ている。また、知財対策として、ビジネスモデル特許に強い弁理士の紹介も行っている。

 CSAJスタートアップ支援制度は、7年間の時限的事業であることから、今後3年までを出資先を募集する“種まき”の期間とし、その後は出口を目指すことになる。
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外部リンク

CSAJ=http://www.csaj.jp/