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エプソン販売 インクプリンタの“本命機”投入 高速コピー機市場の牙城を崩す
2017/03/23 09:00
週刊BCN 2017年03月20日vol.1670掲載
レーザーをインクに置き換えへ
同社が投入する高速ラインインクジェットプリンタは、100枚/分の「LX-10000Fシリーズ」と75枚/分の「LX-7000Fシリーズ」の2機種。プリントチップを斜めに配列した独自のヘッドを開発し小型化・高速化に成功。同製品は、高速印刷機でありながら、印刷品質や用紙対応力でレーザー機と遜色がなく、きょう体の大きさも競合他社のコピー機と同等のコンパクトさだ。100枚/分を実現したLX-10000Fシリーズ
競合製品としては、多枚数機として文教市場などで普及する理想科学工業のインクジェット機「ORPHIS」や、リコーのインクジェットのコピー機「ジェルジェットプリンター」が想定される。エプソン販売(佐伯直幸社長)の鈴村文徳・取締役販売推進本部長は、「印刷品質や消費電力などのすべてで、これらを上回る性能をもつ。世の中のすべての印刷をインクジェットに置き換えることを目標に掲げ、ビジネス用途で拡大を図る」と、理想科学工業やリコーのインクジェット複合機でなく、あくまでもレーザーのコピー機市場をねらっている。
同社のインクジェットプリンタは、家庭用市場で培ったテクノロジー、ノウハウをオフィス向けに応用し独自性を追求してきた。自社のレーザープリンタに比べ、インクジェットプリンタは自社開発部分が多く、粗利益が高く、技術力で優位性がある。
同社がビジネス向けインクジェットプリンタの第一弾を投入したのは2008年。11年にはラインアップを拡充し、本格的に市場に参入した。鈴村取締役は、「現在、レーザー機とインクジェット機の売上比率は半々。10年度(11年3月期)の売上高を1とすると、現在のインクジェットは8倍までに成長した。そして今年、ようやく“本命機”を投入できた」と、振り返る。
中堅・中小の事務機ディーラー獲得
鈴村文徳
取締役
販売推進本部長
同社はカウンターチャージ方式以外にも、本体を購入せずに月額の定額費用だけで販売する「オール・イン・ワンプラン」や機器本体を購入してもらい、インクや保守サービスも別途購入・契約できる「インク・スタンダードプラン」を用意。「カウンター・チャージプラン」は機器本体を購入し、使った枚数分だけを課金するプランで、他のプリンタメーカーが採用する方式と同じ形式だ。
鈴村取締役は、「ディーラーにとっては、売るのがコピー機かプリンタであるかの違いだけで、評価制度や収益構造はアドオンできるプランになっている。複合機は、オフィスの中核機として選択されるケースが多く、継続的に顧客と取引できるためメリットが大きい」と説明する。すでに、各種プランについて販売パートナーに説明しているが、「よい反応が多い」(同)という。
また、今回発売する高速機では、チャネルを絞る計画だ。「現在、販売パートナーは約360社ある。そのなかから取り組みの量が多いパートナーを約100社ほどに絞り込み、より深くパートナーシップを組んでいく」(鈴村取締役)方針だ。得意分野のあるパートナーと、LX-10000F/LX-7000Fの提案ノウハウを個別に蓄積していく。「パートナーの既存顧客に提案するだけなく、新規顧客を獲得できる商材にする」(同)という。
複写機/複合機市場で5%ねらう
レーザー機が主流のビジネス向けプリンタ市場に、高速インクジェット機で挑む同社に勝算はあるのか。高速インクジェットプリンタといえば、理想科学工業の「ORPHIS」シリーズがある。印刷枚数は160枚/分と圧倒的だが、エプソンは印刷画質など品質面で上回るという。国内生産ラインヘッドは、高速ながら高解像度を実現するため、ヘッド幅を従来の1.33インチ、300dpiから1.53インチ、333dpiと長尺化と高密度化した。プリントチップを斜めに配列することで、プリントヘッド自体の小型化も実現。紙送りの速度を遅くすることで最大2400dpiまで対応できる。この解像度について鈴村取締役は、「レーザー機以上だ。(リコーなど)競合他社のインクジェット機と比べても優位性がある」と、自信をみせる。レーザー機と比較した場合の優位性として、インクを吹き付けるという特性から、表面に凹凸のある用紙にも印刷できる対応用紙の幅の広さ、本体の小型さ、そして消費電力の低さも売りだ。
鈴村取締役は「競合他社のレーザー機の100枚/分モデルの消費電力量は5000Wを超える。電源を確保するため、電気工事が必要になる。LX-10000Fの消費電力は、ドライヤーよりも低く、フィニッシャーをつけても一般家庭のコンセントで対応できる。そのため、オフィスのレイアウト変更に際しても、フレキシブルに設置できる。これがインクジェット機の最大の利点になる」と話す。本体も小型で、「競合他社の50枚/分機とほぼ同じで、倍の生産性を実現した」(同)と、オフィスのセンターマシンとして十分な機能性をもっているという。
オフィス向けのインクジェット軽印刷の国内市場規模は約200億円。現在、参入プレイヤーが少ないが、同社の参入で市場は拡大することが予想される。鈴村取締役によると、複写機/複合機の高速機(50枚/分以上)の市場も拡大中で17~18万台に上る。インクジェット機の市場も高速機の市場も今後拡大するなかで、今後3年で高速複写機/複合機市場で5%のシェアを取るとしている。
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