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パナソニック ハードからソリューションビジネスへ顧客密着体制を整える

2017/03/09 09:00

週刊BCN 2017年03月06日vol.1668掲載

 パナソニック(津賀一宏社長)は、グループ会社のBtoBソリューション事業成長の中核を担う顧客密着型事業体制の構築を狙いとして、AVCネットワークス社を母体に組織再編を行い、2017年4月1日付で新しい社内分社「コネクティッドソリューションズ社」を設立する。「Let's note」「TOUGH」シリーズを抱えるITプロダクツ事業部もソリューションビジネスに大きく舵を切る。(山下彰子)

ソリューションビジネスを強化

 ITプロダクツ事業部は、国内市場でモバイルPC「Let's note」を、海外市場で「TOUGHPAD/TOUGHBOOK」シリーズをメインに展開している。16年度の国内PC市場では、過去最高の販売台数を達成する見込みで、モバイルPC市場で過半数を取るほどシェアを伸ばした。ワールドワイドでみると北米市場が回復しつつあり、TOUGHPAD/TOUGHBOOKとも販売台数が伸びている。好調ではあるが、パナソニックはさらなる高収益事業体を目指し、事業方針の変更、組織編成に着手した。
 

坂元寛明
パナソニックAVC
ネットワークス社常務
ビジネスモバイル事業担当
ITプロダクツ事業部
事業部長

 パナソニックAVCネットワークス社常務 ビジネスモバイル事業担当ITプロダクツ事業部の坂元寛明事業部長は、「数年前はそれほど競合がなかったが、ここ最近増えてきた。モノの差異化だけでは今後経営的に難しい」と話し、状況の変化を敏感に感じ取っているようだ。パナソニックとしての強さを出すため、製品の差異化に加え、ソリューションによる差異化を打ち出し、事業の強化を目指す。

 具体的には、これまでの商品軸から業界軸、つまり、顧客の業容に応じた提案へと切り替える。「商品軸は広がりにくく、お客様の求めるプラスαにお応えできない。Let's note、TOUGHシリーズそれぞれを相性のいい業界にわけ、業界軸ごとに部署を配置する。そして業界に合うソリューションを考え、提案していく」と坂元事業部長は話す。なお、B to C事業を縮小するのではなくソリューション提案によって全体を引き上げる計画だ。

 さまざまな業界で共通の課題となっている時間効率を上げ、業務効率を高める、いわゆる「時間短縮」。時間短縮ソリューションを生み出す第一歩として掲げたのが、1月の記者会見で坂元事業部長が話した「お客様への向き合い強化」だ。

 「営業マンの使い方、工場の現場の使い方など、お客様が使っている現状をまず知る。そのために、例えば現場に向かうお客様に一日同行させてもらい、お客様の横で使い方を観察することも行う」と坂元事業部長は話す。顧客の使い方、困りごと、課題などを洗い出し、それをソリューション開発担当にフィードバックしていく。ソリューション開発は、イノベーションセンターなど、社内にすでにあるソリューション開発事業部と連携し、「必要であれば業界に特化したソリューション企業を買収する」ことも視野に入れている。当然、これまで同様、ソリューションパートナーに協力を仰いでいく。さらにより業界に特化したソリューションを提案するために、各業界に精通したパートナーを募っていくという。

 AVCネットワークス社 ITプロダクツ事業部 東アジア営業統括部の向坂紀彦統括部長は「とくに力を入れている業界は物流業界」という。物流業界は、インターネット販売の拡大により、荷物数が増え、時間を短縮しつつも効率よく、クオリティを落とさずにいかに届けるかが課題となっている。

 「以前はハンディターミナルで高いシェアを取ったが、今はお客様の要望が変わった。また、市場の拡大により、企業数が増えた。これまで大手を中心にビジネスを展開してきたが、中小企業まで裾野を広げたい。さらに倉庫管理まで拡大したい」と向坂統括部長は話し、業界を熟知したパートナーと組むことで顧客への提案強化を図りたい構えだ。

 製品別ではTOUGHシリーズはすでにソリューションとのセット提案が進んでおり、ソリューションビジネスへの切り替えが比較的容易だ。今後はさらなる強化を図る。一方、Let's noteは、PC単品で購入する顧客が多い。今後はセキュリティや廃棄時のデータ消去サービスなどを組み合わせて提案していく方針だ。
 

 こうした事業方針の変更に合わせて事業部名も変える。「現在のITプロダクツ事業部は、まさに商品軸を表す名称だった。今後のわれわれのミッションは、モバイルワーカーの業務改革に貢献するソリューションを提供すること」と坂元事業部長は話し、4月1日からモバイルソリューションズ事業部として始動する。

パナソニックが進む道

 16年は、PCメーカーの再編が続いた。国産メーカーは縮小し、または外資系メーカーに飲み込まれた。純国内メーカーが減った今、パナソニックには日本のPC市場を導く役割が求められる。生き残りをかけたパナソニックが出した答えが、今回の「ソリューションビジネスへのシフト」だ。坂元事業部長は、「薄利多売を追いかけてはだめだ。少なくともパナソニックには合っていない。お客様の業務形態がどう変わっていくか、読みが重要になる」と語る。
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外部リンク

パナソニック=http://www.panasonic.com/jp/