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NECとオラクル 既存ビジネスモデルを生かす クラウド領域で戦略的提携を発表
2017/03/02 09:00
週刊BCN 2017年02月27日vol.1667掲載
2020年度に1500億円のビジネス規模が目標
今回の提携では、クラウド環境を構築して使用量に応じて課金するという日本オラクルのオンプレミス型クラウドモデル「Oracle Cloud at Customer」を、NECのデータセンター内に構築してクラウドサービスを提供。ユーザー企業にとっては、オンプレミス型で導入している「Oracle Database」をクラウドで容易に活用できるようになるなど、既存システムの円滑なクラウドへの移行、効率的な統合運用管理や他社クラウドとの安全・安心な接続が実現できるという。NECと日本オラクルにとっては、基幹システム(SoR)領域でユーザー企業にクラウドを組み合わせたハイブリッド化の提案など、既存ビジネスの付加価値化、新ビジネス(SoE)領域でのデータ活用を見据えながら、IoTやAIなどに関連したシステム・サービスの提供拡大が目的となる。
また、NECではマネージドサービスの一環として国内で初となるOracle Cloud at Customerの一次保守を開始している。さらに、Oracle Cloudに対応可能なエンジニアを今後3年間で1500人育成する計画だ。NECの橋谷直樹執行役員は、「今回の提携によるSoEでの新たな事業などで2020年度(21年3月期)までの4年間で、1500億円規模のビジネス創出を目指す」との方針を示している。
NECは他社の提携・協業を意識
日本オラクルでは、Oracle Cloudを通じて富士通やNTTデータなどとも提携・協業している。今回のNECとの提携も、「Oracle Cloudを普及させるための一つの手段」(日本オラクルの石積尚幸副社長)と、他社とのパートナーシップと一線を画したものではないことを示唆しており、「NECの全国を網羅した販売・サポート網は大きな魅力。提携した大きな理由でもある」(同)と話す。がっちりと握手するNECの橋谷直樹執行役員(左)と
日本オラクルの石積尚幸副社長
一方、NECでは「これまで日本オラクルとは、30年に渡ってパートナーシップを組んできた。Oracle関連システム案件が1年間で3000件、保守契約は1万5000システムに対応してきた。クラウドでも、他社には負けずにトップの実績をあげる」(橋谷執行役員)と意気込む。約100種類に達したソリューション(SaaS)も最大限に生かして、製造業や流通業をはじめとし、地方自治体や医療機関など、全方位での案件獲得を狙う。「ユーザー企業との新たな共創も見据えてOracle Cloudとの連携を順次拡大していく」と橋谷執行役員は説明。加えて、各業界で強いITベンダーとのパートナーシップを強化することで、IoT関連のソリューション強化も図っていく。
DBやSIのビジネスモデルが儲かる
両社それぞれにメリットをもらたすため、NECと日本オラクルが今回、提携することになったわけだが、クラウド関連でパートナーシップを組んだからといって、これまでと大きくビジネスモデルが変わったかといえば、そうでもなさそうだ。「クラウドは儲からない」。そう打ち明けるのはNECの橋谷執行役員。そこで、PaaSやIaaSの環境を構築することができるOracle Cloudを設置。「当社が得意としているのはSI。これによって、顧客に新たな価値を創出する」としている。
日本オラクルも、全国にOracle Cloudを広めるためにNECの販売・サポート網を最大限に活用することが提携の狙い。Oracle Databaseを拡販するためのモデルと、そう変わらないビジネスモデルといえよう。
「クラウド領域での新たな戦略的提携」と銘打っているが、クラウドを通じて両社が改めて原点に戻って、得意とするビジネスモデルで成長を図る。今回の提携発表で、そのような姿が垣間見えた。
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