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米バーチャストリーム 日本でのサービス展開を本格化 クラウドでDell EMCブランドの存在感を高めるか
2017/02/23 09:00
週刊BCN 2017年02月20日vol.1666掲載
米バーチャストリーム、EMCジャパン、NTT Comの3社は、2月7日、国内クラウド市場拡大に向けた戦略的協業に合意し、サービス開発、販売面で連携することを発表した。具体的には、NTT Comの国内データセンターを活用してバーチャストリームの日本リージョンでのサービスを今春に開始するという内容で、バーチャストリームの自社ブランドでのサービスを正式に日本でもローンチし、EMCジャパンとデルが営業・サポートを手がける。さらにNTT Comは、バーチャストリームのサービスを、同社のクラウド基盤サービス「Enterprise Cloud」の新しいメニューである「共有型SAPシステム向けCloud」としても販売する。
バーチャストリームは、もともと2015年に当時のEMCが買収したクラウドサービスベンダーだ。基幹システム向けクラウドサービスとしての高い安定性やセキュリティ、パフォーマンスを担保しつつ、共有型クラウドの効率性も追求している。CPU、メモリなどのリソースをきめ細かく管理する特許技術により、リソースの効率的な活用や、それに伴う利用コストの低減効果なども期待できるという。
米デル・テクノロジーズのマイケル・デル会長兼CEOは、昨年10月に米テキサス州オースティンで開いたプライベートイベント「Dell EMC World 2016」のなかで、Dell EMCのビジネスにおけるバーチャストリームの重要性に言及していた。要約すると、ユーザー企業のデジタル変革のための最適なインフラ環境を整備するためには、データセンターの“モダナイズ”、SDxによるIT部門のあらゆるプロセスの“オートメーション”、そしてそれぞれのワークロードの実行環境を最適化する“トランスフォーメーション”という三つのステップが必要であり、バーチャストリームは最後のステップであるトランスフォーメーションをカバーする有力なソリューションを提供するという内容だった。
日本でのサービス展開は、2015年10月に、米バーチャストリーム、SAPジャパン、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)が協業し、CTCのDCから、CTCのサービスブランドである「CUVICmc2」として提供したのが最初だ。基幹システムのクラウド化ニーズに応えるIaaSという意味では、国内DCからの提供は必須でもあり、従来は、実質的にこれが唯一の販路になってしまっていた。しかし、今回の3社の戦略的協業により、バーチャストリームの販路は一気に広がることになる。
CUVICmc2にSAPジャパンが絡んでいるように、バーチャストリームのメインターゲットは、SAPのERPをクラウド化したいユーザーだ。SAPは、ERPに代表されるSoRだけでなく、IoTソリューションなどSoEも網羅する統合的なプラットフォームとして「SAP HANA」に注力しており、最新ERP製品「S/4HANA」も、HANAがベースになっている。NTT ComやCTCはまず、S/4HANAを使いたいと考えているユーザーに、バーチャストリームの活用を提案していく方針だ。
SAPのクラウド化という意味では、SAP自身が提供するHANAベースの基幹システム向けクラウドサービス「HANA Enterprise Cloud」もバーチャストリームの競合になる。それでも、選択肢が広がったことが基幹システムのクラウド化そのものの市場拡大につながる可能性は高い。NTT Comは、Enterprise Cloudの共有型SAPシステム向けCloudを、自社のマネージドサービスなどと合わせた直販中心で売っていく方針だが、EMCジャパンやデルがバーチャストリームの再販チャネルをどう整備していくのかもポイントになりそうだ。
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