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エプソン(中国) 大容量インクモデルが好調 A3カラー機でビジネス市場開拓
2017/02/02 09:00
週刊BCN 2017年02月06日vol.1664掲載
エプソン(中国)は、およそ6年前から大容量インクタンク搭載プリンタ(中国名称:墨倉式)の販売に力を注いできた。製品群はセイコーエプソンが10年に発売した戦略モデルで、従来機種と比較して一枚当たりの印刷コストを抑えた点に特徴をもつ。16年7月には、グローバル全体で累計1500万台の販売を達成しており、エプソン(中国)の長谷川学・Printing & Scanning Marketing Product Managerによると、「中国市場は当初苦戦したが、徐々に価値が認められてきた。現在では、年間70~80万台を販売している」という。同社は、発票(中国の領収書)の発行で多用されるSIDMプリンタで、約30年にわたり市場シェア1位を獲得しており、中国国内で高い認知度・ブランド力を有していることも功を奏した。
IDCの調査によると、16年第3四半期の中国インクジェットプリンタ市場で、エプソン(中国)の売上高シェアは50.8%、出荷台数シェアでは35.2%を記録。大容量モデルではインクタンクを同梱して販売するため、競合製品と比べて単価は高く、「販売台数が増えると、それ以上に売上高シェアが伸びる」(同)という好循環を生んでいる。
「Epson WF-R8593」を紹介する藤井茂夫 Business Support Senior Director(右)と
長谷川学 Printing & Scanning Marketing Product Manager
大容量インクタンク搭載プリンタの多くはA4機種で、一般消費者や中小規模事業者のユーザーが多いが、同社では今後、A3カラー機の販売にも力を注ぐ。昨年中頃から、インクジェットプリンタにより大容量のインクパックを搭載したモデルとして「Epson WF-R8593」を新たな戦略商材と位置づけ、ビジネス市場の開拓を本格化している。
このEpson WF-R8593では、一つのインクパックで最大7万5000枚の印刷が可能で、エプソン(中国)ではコピーショップを主要ターゲットに位置づける。中国国内には、気軽に印刷を注文できるコピーショップが大小を含めおよそ25万店舗存在するとみられ、一般企業では、ここにカラー印刷を外注するケースが多い。このことは、中国でカラー機がなかなか普及しない一つの要因になっている。一方、専門店であるコピーショップは印刷量が膨大で、印刷物を売り物としていることから、プリンタに対する機能・品質・サービスへの要求が高い。つまり、1枚当たりの印刷コストを抑えつつ、消耗品交換の手間が省ける大容量インクパック搭載モデルの需要が期待できるわけだ。長谷川・Product Managerは、「7万5000枚の印刷が可能な機種は、レーザー・インクジェットを含めて競合他社にはない」と自信をみせる。
中国のプリンタ/複合機市場は成長が鈍化しており、ビジネス向けも大きく伸びる傾向にはない。これに対して、エプソン(中国)の藤井茂夫・Business Support Senior Directorは、「市場全体の成長は減速しているが、ビジネス向け市場は当社があまり手をつけられていなかった領域であり、開拓余地は大きい」と説明。「中国のGDP成長率を上回るペースで(プリンタ事業の売上高)を伸ばしていきたい」と意欲を示している。
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