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ソフトバンク ARMでクラウド勢力図の変革に挑む米PacketがARMサーバーのベアメタルクラウド提供
2017/01/19 09:00
週刊BCN 2017年01月16日vol.1661掲載
インテル製サーバーと比べて性能が2倍、価格が10分の1
米Packet
ザッカリー・スミス
CEO
今回、日本で提供を開始したベアメタルクラウドサービス「Type2Aサーバー」の提供を北米で16年11月に開始したところ、わずか2週間で400ユーザーを獲得したという。「高性能のサーバーを低価格で使いたいという開発者が利用している」とのことだ。これまで米Packetが提供していたインテル搭載サーバーと比べて10分の1程度で使えるという料金体系も魅力の一つになっている。
Type2Aサーバーに搭載しているアーキテクチャはARM v8-Aで、二つの48コアをもつキャビウム製のプロセッサ「ThunderX」を採用している。このサーバーで構成するシステムは省電力も実現している。
ARM v8-Aを搭載したサーバー
これまで米国のシリコンバレーとニューヨーク、オランダのアムステルダムにリージョンを構えていたが、日本でのサービス提供に伴って東京リージョンを設立。加えて、クリエーションラインとパートナーシップ契約を結んでおり、ユーザー企業のIT戦略コンサル、POC導入、システム設計/構築、運用を切り口にType2Aサーバーの提供を促していく。とくにIoTでのビッグデータ解析など、広がりつつある新しいニーズに対して、高性能で低コストのベアメタルクラウドサービスを提案していく。
モバイル普及の潮流に乗るサーバーでもARMを主流に
これまでインテル製サーバーを使ったベアメタルクラウドサービスを提供していた米PacketがARMを採用することになったのは、どのような理由があるのか。スミスCEOは、「モバイル市場で主流になっているARMをサーバーでも採用することが時代の潮流に乗ることになるだろう」と捉えている。今後もスマートデバイスを中心に業務でのモバイル活用が増えていくことが予想される。そのなかで、ますますARMがクローズアップされるとみており、「ARMサーバーを活用したクラウドサービスを、どこよりも先に提供することが重要と判断した」という。これは、「当面は、開発者がType2Aサーバーを使うケースが多いといえるが、一般企業がARMの性能を認め始めたとすれば、Type2Aサーバーを利用する可能性は十分にある」。IoTを切り口に今後はインターネットに接続可能なデバイスの増加が予想され、モバイルデバイスが増える可能性も高い。「このような流れも見据えている」(スミスCEO)としている。さらに、「他社よりも選択肢が多いということが認知されれば、他社のクラウドサービスとの差異化にもつながる」とアピールする。もともとのきっかけは、ARMを買収したソフトバンクからARMサーバーを採用してほしいとの打診があったからで、「当初、正直にいえば、ARMの信頼性に疑問を抱いていた」と打ち明ける。ところが、実際に開発してみたところ、「インテルよりも性能が高いことがわかった」という。今では「サーバーで確固たる地位を築いているインテルの牙城を崩すかもしれない」との確信に至った。ソフトバンクにとっては、ARM関連事業の拡大につながりそうだ。
クラウド事業の戦略企業 ソフトバンクの展開に注目
他社と差異化を図ったサービスを提供し、ARM関連事業の拡大にもつながる可能性を秘めた米Packetは、ソフトバンクにとって戦略的に重要な位置を占める企業であることは間違いない。だからこそソフトバンクは米Packetに出資し、日本でのサービス提供において全面的に支援しているわけだ。また、日本でAlibaba Cloudの提供を開始したことにより、ソフトバンクグループによる今後のクラウド展開に注目が集まる。ただ、ディストリビュータとしても機能するソフトバンクグループにとっては、「マイクロソフトの『Microsoft Azure』など、他社のクラウドサービスの提供も積極的に行っていく」(ソフトバンク関係者)との方針を示している。そういった点では、さまざまなクラウド事業者のサービスを提供して、米Packetにとっての競合とも協調関係を継続していく考えだ。クラウド市場で、他社と一線を画したポジショニングを確立することになるだろう。
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