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NECソリューションイノベータ NECでも進む子会社再々編の動き 先端技術の浸透と共有が目的
2017/01/19 09:00
開発子会社の統合は、生産性を高め、コスト削減の効果が期待できるとされているが、NECが進める一連の統合は、それだけではない。これまでの技術が世代交代していることを踏まえて、新しい技術をすばやく全国の開発拠点に浸透させる狙いがある。今回のNECソリューションイノベータによるNEC情報システムズの統合は、こうした狙いがより顕著に現れている。
NECグループ向けシステムを手がけているNEC情報システムズは、NECの中央研究所と近いところで仕事をすることが多く、NECが力を入れているAI(人工知能)の「the WISE(ザ・ワイズ)」に精通し、他にもIoTやクラウド関連技術に長けている。次世代の売れ筋商材につながるノウハウを採り入れることで「開発力や競争力を一段と高める」(NECソリューションイノベータの杉山清社長)と話す。
また、NEC情報システムズのリソースの一部を顧客向けに振り分けることによる増収効果も期待できる。だが、それ以上に期待できるのは、大手製造業としてNECが取り組んできたIoT/AIを活用した生産革新の知見をベースに、国内外の製造業ユーザーに向けてソフトやサービスを横展開していくきっかけにできるということだ。
NECソリューションイノベータは、地域のSE子会社が統合して発足した経緯から、NEC本体や販売子会社のNECネクサソリューションズが主に担当する東名阪を除く地域市場において、自らが前面に出てビジネスを手がけている。実は、こうした地域の市場でこそ、従来のビジネスを革新するような新しい技術が求められていることが多い。すでに産学官連携や異業種とのオープンイノベーション手法で、AIやIoTなどを駆使した実証実験を全国各地で精力的に実施。一部では事業化にこぎ着けた案件も出てきている。
NECソリューションイノベータの19年3月期までの3か年の中期経営計画では、支社が中心となる地域ビジネスを16年3月期比で1.5倍にする目標を掲げている。国が進める地方創生の方向性に合致した提案や、地域の課題を解決することによる新しい地域市場の創出を主導するような“ビジネス創造人材”も同1.5倍に増やしていくことを計画している。これまで解決が難しかった課題を解決するには、やはり新しい技術が有効であり、新技術を採り入れたり、応用のノウハウを蓄積していくには、SE会社を統合化し、全国規模で横展開しやすい体制を構築するほうが合理性との判断が、今回の経営統合の根底にある。
富士通も16年11月1日付で富士通システムズ・イーストと富士通システムズ・ウエスト、富士通ミッションクリティカルシステムズの3社、約9400人を富士通本体に吸収合併するとともに、AIやIoTなどのデジタルテクノロジーを担う約3000人規模の組織を再編成している。京セラコミュニケーションシステム(KCCS)も京セラ丸善システムインテグレーションやKCCSマネジメントコンサルティングを相次いで本体に吸収している。
技術革新は絶えることがなく、そのノウハウの共有をよりスムーズに行うためにも、開発子会社やグループ会社の統合再編が有効となれば、今後もしばらくは同様の動きが活発化する可能性がありそうだ。
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