2016年7月にインテル(江田麻季子社長)と内田洋行(大久保昇社長)が「教育IoT」の分野で協業すると発表してから5か月を迎えた。市場の立ち上がりはこれからではあるものの、「中期的に大きな市場に膨れ上がる可能性が高い」と、内田洋行の大久保社長が改めて断言した。果たして教育IoTには、どのようなビジネスチャンスがあるのだろうか。(佐相彰彦)
情報創造力や批判的思考、問題解決力、コミュニケーション力、プロジェクト力、ICT活用力などのスキルを育成する「21世紀型スキル」の実現に向け、新たな学習・指導方法として学習者が主体的に学ぶ「アクティブ・ラーニング」が重要視されている。また、政府が発表した「日本再興戦略 2016」のなかで、IoTやビッグデータによる新たな産業創出を担う人材育成の必要性から、個々の習熟度に応じた学習を通じて必要な資質や能力を効果的に学ぶ「アダプティブ・ラーニング」の推進が活発化している。

インテル(写真左が江田麻季子社長)と内田洋行(大久保昇社長)は教育IoTをテーマに協業した
こういった状況のなか、「一人1台のPC活用」をテーマとする実証実験や「アクティブ・ラーニング」の教員研修プログラムで以前から協業していたインテルと内田洋行が教育IoT分野でも、パートナーシップを深めることになった。具体的な取り組みはこうだ。タブレット端末/デジタル教科書/デジタルコンテンツの使用状況、学力テスト、講義配信映像システム、児童・生徒・学生からのアンケート、百葉箱の気象観測、公務支援システム、カメラ映像、児童の登下校システム、ICT支援員・ヘルプデスクなど、さまざまな教育用ICTソリューションやセンサからデータを抽出し、アクティブ・ラーニングやアダプティブ・ラーニングなどにつなげるための教育環境モデルを構築。授業と学習での有効性、システム利用のしやすさを教員・学習者など利用者視点で実装と検証を進めていく。
現段階では、「市場は、まだ立ち上がっていない」と内田洋行の大久保社長は打ち明ける。しかし、「確実に市場が形成されるし、また大きな規模になる可能性が高い」といい切る。これは、内田洋行が教育市場向けICTシステムの導入で多くの実績をもっており、ICT分野でも今後、導入が相次ぐと捉えているからだ。実際、調査会社のシード・プランニングによれば、国内教育ICT市場が20年に1547億円になることを予測。15年と比べると8.3倍の伸びになることを見込んでいる。
日本には小・中学校で約3万2000校、高校を含めると4万校近くあり、これらがICTに加えてIoTの整備も進めることになれば、大きな市場に化ける可能性を秘めている。まだ確立していない教育IoTに適した製品・サービスを創出することは、大きなビジネスチャンスをつかむことにつながる。