「Track A」の最終セッションには、NTTPCコミュニケーションズ(NTTPC)の池上聡・サービスクリエーション本部第一サービスクリエーション部部長が登壇。「顧客に響く“IoT”の進め方~“IoT”の実力と可能性・取組み事例から得た気づき~」と題して講演した。IoTで豊富な知見やノウハウをもつNTTPCだからこそできるユーザー企業へのアプローチ法や懐へ入り込む勘所について、多くの事例やエピソードを交えながら紹介した。
「売れる」IoT最前線

池上 聡
サービスクリエーション本部
第一サービスクリエーション部
部長
NTTPCでは、「NTTグループの先頭を走ってきた」(池上部長)という強い自負がある。IoTという言葉が生まれる前から、M2MネットワークやM2Mクラウドを通じて顧客の課題やニーズを把握し、解決に導いてきた。現在では、主に「みまもり」「遠隔監視」「Telematics」の3分野でIoTビジネスに取り組んでいる。IoTステージを(1)「つなぐ」(2)「見える化」(3)「分析」(4)「新ビジネス」の4段階に分類し、各ステージにおける事例を紹介した。
まず、「つなぐ」事例として取り上げたのが、鳥獣罠の監視装置「みまわり楽太郎」。鳥獣による日本の農作物被害は年200億円にも達する。だが、現状の対策は罠を仕掛けて猟友会の会員が見回る人海戦術で、罠のメンテナンスや見回りが大きな負担。「みまわり楽太郎」は、罠にセンサと携帯電話の通信機能を付けた監視装置で、鳥獣が罠に入ると装置に電源が入ってメールで通知し、罠を見回らなくてもリアルタイムで捕獲を知ることができる。監視装置はセンサとFOMAの通信機能を備え、電源も乾電池とシンプルだが、鳥獣害に悩む地域にとっては画期的なIoTデバイスとなっている。「さらに、新鮮な鳥獣が手に入ることで、ジビエの供給という新しい価値につなげることができる。そうした発想をもってシナリオをつくれるかが大切」と池上部長は語る。
「見える化」事例では、ゴルフカートの動態管理ソリューションを紹介した。これは、ビーコンを使ってキャディーのスマートフォンがすれ違う際にBluetoothで通信して位置情報を捕捉。各パーティのラウンド状況を管理できるようにした。GPSを使用する方式と比べて、コストを大幅に削減できる。
また、「分析」事例でMachine Learning、Deep Learning、AIを活用した販売データ分析について、「新ビジネス」で具体的には紹介できないとしながら、GEのようにメーカーによるサービスの事業化について触れた。
「ゲンバ」がポイント
「IoTに取り組むということは、あらゆるモノをつなげることではなく、その本質はこれまでできなかったことができるようになることである」と池上部長。そのためのキーワードとは、「ゲンバ改革、ゲンバ改善」であると強調する。
IoT案件では、「すべてお任せください」「パッケージ化されています」「POC(Proof of Concept=概念実証)から始めましょう」といった話をしていないだろうか、と池上部長は問いかける。
質の高いIoTにするためには、経営層、情報システム部門、企画・戦略部門、各現場の立場の違いを認識し、どこにアプローチすべきかを考えなければならない。そして、それぞれが抱えている課題としっかり向き合って解決していくことである。
「NTTPCは幅広いソリューションを提供している。そして、お客様とともに現場に入って、改革、改善に取り組んでいるが、当社だけですべてのニーズをカバーすることはできない。お客様の課題解決を実現するには、専門家との連携が欠かせない」と池上部長は強調した。

顧客に響く“IoT”ブースでも説明
NTTPCは、ネットワーク、クラウド、セキュリティ、ナレッジ、アナリティクス、デバイスの各分野でソリューションを提供しているが、最近では、各分野のコンポーネントを自由に選び組み合わせて、ユーザーに提案する「Block(ブロック)」という概念でIoTソリューションを提供している。池上部長は、「BlockによるIoTソリューションを推進するには、パートナー連携が重要だ。お客様にシステムを提供するのではなく、各分野の専門家であるSIerの方々と連携し、お互いの強みを生かした最適な組み合わせで課題の解決が可能になる」と訴えた。
また、POCからスタートしたものの、そこから先に進まないケースも多い。その解決には、マイルストーンを決め、効果の測定方法や、KPI設定を顧客のなかに深く入り込んで取り組むことが重要という。そこで、主となるアプローチすべき対象は、企画・戦略部門、各現場であり、ゲンバのお客様と一緒になってやっていくこと。そして、POCを通じて信頼関係を構築することで、その先へと進んでいくことができるとした。
講演の最後に池上部長は、「少子高齢化など、日本には解決しなければならない課題が山積み。その解決のため、われわれIT業界にいる者同士が力を合わせて、業界を盛り上げていかなければならない」と抱負を述べた。