都市部を中心に広がってきたクラウドが、ようやく地方にも波及しようとしている。地域のSIerからは、「まだオンプレミスが根強い」「ユーザーが安定稼働しているオフコンを変えたがらない」という声を聞くものの、IoTをきっかけに工場などでクラウドが採用され、追随するかたちで業務システムに波及するという動きが出てきた。クラウドの普及は、地域のSIerにかかっている。日本マイクロソフトは、手厚いサポートでクラウドパートナー企業の倍増を狙う。パートナーになるためのハードルを上げて質を求めるAWS(Amazon Web Services)とは、対照的な施策。明日はどっちだ。(畔上文昭)
小規模なSIerを巻き込む
日本マイクロソフトは10月3日、新たなパートナープログラム「Advanced Support for Partners」を開始すると、パートナー企業向けの年次イベント「Japan Partner Conference 2016 Tokyo」で発表した。狙いは、小規模なSIerやISVをクラウドパートナーとして獲得し、クラウドの売り上げを伸ばすこと。

日本マイクロソフトの平野拓也社長(左)とレッドハットの望月弘一社長。
オープンソース陣営を取り込むことで、マイクロソフトはクラウドビジネスの拡大を図る
同イベントで登壇した日本マイクロソフトの平野拓也代表取締役社長は、クラウドの売上比率について「FY15(2015年度)は12%、FY16は32%をクラウドが占める。これをFY17には50%にしたい」と説明し、実現に向けてパートナー施策を強化すると語った。その一つが、前述のパートナープログラムである。
マイクロソフトのパートナーサポートサービスには「Premier Support for Partners」があるが、主に大手のSIerやISV向け。Advanced Support for Partnersでは、今まで加盟していなかった小規模なSIerやISVをターゲットにする。さらに、CSPのビジネス拡大をサポートする体制として「Practice Development Unit(PDU)」を発表。日本ではエンジニアが20名、営業一人につき2~3名のクラウドアーキテクトという体制でパートナー企業の新たなソリューション開発をサポートする。
ちなみに、マイクロソフトが認定する「クラウドソリューションプロバイダー(CSP)」は、昨年1年で600社のところ、今年は1200社へと倍増させることを目指している。
OSS陣営との協業で拡大へ
マイクロソフトがクラウドへの参入とともに、大きく舵を切ったのが、かつて敵対していたオープンソースソフトウェア(OSS)陣営との協業である。現在では、国内トップクラスのOSSディストリビュータでもあることから、OSSを得意としているSIerの取り込みにも注力している。その象徴の一つが、OSS陣営を牽引するレッドハットとの協業である。
Japan Partner Conference 2016 Tokyoに登壇したレッドハットの望月弘一代表取締役社長は「Microsoft AzureをキーにしたオープンなITモダナイゼーションを推進し、両社によるパートナーエコシステムを拡大させる。Red Hat Enterprise Linuxだけでなく、コンテナやIoT、DevOpsなどに関連するものも協業により提供していく」と語った。
OSSを得意としているSIerを取り込むためにも、マイクロソフトはWindowsのイメージを払拭しなければならない。参加しやすいパートナープログラムと、サポート体制の強化には、そういった思惑もあるといえるだろう。