NTTデータ イントラマート(中山義人社長)は、BPM製品「IM-BPM」をリリースした。プラットフォームである「intra-mart Accel Platform」の2016 Summerアップデート版から使うことができる拡張製品だ。“次世代型業務改革ツール”と銘打つこの新製品により、同社は業務アプリケーションのプラットフォームベンダーとして、大きく飛躍する青写真を描いている。中山社長には、日本企業の真の強みを理解したうえで、その競争力向上に貢献するための製品づくりを進めてきたという強い自負がある。国産ベンダーとしてのプライドをかけ、外資系ベンダーの“欧米式グローバルスタンダード”とは異なる発想で成長を目指す。(本多和幸)
ワークフローの強みをBPM製品に生かす

中山義人
社長 NTTデータ イントラマートのビジネスの中核は、オンプレミスの業務アプリケーション構築基盤としても、PaaSとしても利用できるプラットフォーム製品「intra-mart」シリーズだ。2012年に最新版である「intra-mart Accel Platform」をリリースしている。今年3月末の時点でintra-martシリーズの導入ユーザー数は4800社を超えた。業務アプリケーションをノンプログラミングでスピーディに開発できるという特徴があり、セールスフォース・ドットコムの「Force.com」やサイボウズの「kintone」などのPaaSが競合といえる。NTTデータ イントラマートも、NTTコミュニケーションズのIaaSと連携したPaaS版intra-martともいえる「Accel-Mart」をラインアップしているが、intra-martそのものはマルチクラウドで動かすことができる。中山社長は、「インフラに縛られないで使ってもらえるのがintra-martの価値。クラウドが浸透するほど囲い込みは困難になるので、垂直型のPaaSは自分で自分の首を絞めているようなもの」と、自社の優位性を説明する。
そんな同社が最大の強みとして市場に訴求してきたのが、intra-martの一機能として提供してきたワークフローだ。単体製品ではないにもかかわらず、ワークフロー市場で9年連続シェア1位(富士キメラ総研調べ)を獲得している。「日本企業特有の複雑なフローへの対応に強みをもっていて、カスタマイズが要らないくらいの豊富な機能を取り揃えてきた」と、中山社長は胸を張る。ただし、これまでの守備範囲は旅費・経費精算や勤怠管理などで、用途は人事総務系業務のプロセス可視化・効率化にとどまっていた。しかし最近では、企業内のあらゆる業務部門でITを活用した業務プロセス改善のニーズが高まっており、同社はここに、自らのストロングポイントであるワークフローの技術を水平展開できるのではないかと考えた。そうした目的意識のもと、Accel Platform関連製品の機能強化を図ってきたわけだが、IM-BPMはその締めくくりともいえる製品で、「業界、業種、業務内容を問わず、柔軟に業務改革のためのアプリケーションを構築し、かつ全社、全グループ会社の統合的な業務プロセス管理を実現できる製品群がようやく揃った」(中山社長)という。センサ情報などを基点とする業務プロセスにも対応し、IoT領域もカバーした。
複雑な業務プロセスこそ日本企業の強み
IM-BPMは、ビジネスプロセス・モデリングの国際標準規格「BPMN 2.0」にも対応している。同社がこれから具体的にターゲットとしていくのは、IBMやオラクルといったグローバルベンダーのBPM製品のリプレース需要だ。中山社長は、こうしたグローバル市場で揉まれた実績のある競合製品に対する優位性の点でも、IM-BPMには絶対の自信をもっているようだ。「まず、圧倒的に価格が安い。外資系BPM製品に比べると3分の1~4分の1程度」という。さらに、最も顕著な差異化ポイントとして、日本企業の強みの源泉をフォローできている点を挙げる。
「トップダウンで意思決定してストレートにプロセスが流れていく欧米型の業務スタイルには外資系ベンダーのBPMが確かにマッチするだろう。しかし、日本企業の業務プロセスはそんなに単純ではなくて、途中で戻ったり、横に逸れたり、急な割り込みがあったり、イレギュラーな要素が多い。SoRである基幹システムまわりの業務は別だが、SoE領域のフロントアプリケーションを使うような業務部門は、むしろ複雑な業務プロセスのなかにその企業特有の価値を産み出す秘密があり、競争力の源になっていることが多い。ユーザー企業は、これを損なうことなく業務のデジタル化を進めたいわけだが、欧米型のグローバルスタンダードに則ったBPM製品でこれに対応するのは無理だろう」(中山社長)。
Accel PlatformとIM-BPMを使えば、ワークフローで複雑な業務プロセスを処理し、それをBPMのなかに組み入れることができるほか、Accel Platformのオプション製品を使って、社内の既存システムや、場合によっては他社のクラウド製品との連携もノンコーディングで実現し、「複雑な業務プロセスを捌く入れ子の構造を容易につくることができる」という。今夏のAccel Platformのアップデートでは、「Microsoft Office 365」とセールスフォース製品との連携機能を用意したほか、パートナー企業やグループ会社が独自に、Box、kintoneとの連携ソリューションを開発・提供している。今冬のバージョンアップでは「SAP HANA」との連携も予定しており、外部接続性の向上に継続的に取り組んでいく方針だ。
業務プロセス改善に徹底してこだわることでプラットフォームとしての競争力を高め、競合のクラウド製品も含めた他システムとのスムーズな連携を確保し、導入のハードルを下げる。これこそが、IM-BPMのリリースからみえてきたNTTデータ イントラマートの勝ち残り策のポイントといえよう。
IM-BPMの事業目標としては、「年間100本の販売」を目指す。中山社長は、「ワークフローでは日本一になったので、次はBPM。20年までには日本市場のトップを獲る」と話すが、将来的にはアジア市場でのBPM製品のトップシェア獲得も見据えている。「アジアは欧米型とは違い、ボトムアップのフローを大事にしながら業務プロセスを回していく企業が多い。日本型に近い、きめ細かさや柔軟性、拡張性が重要視される市場がある」とみている。
社内にユーザーの業務改善のコンサルティングを担当する部隊を設置するとともに、その補完的な存在として、特定業種の業務プロセスに精通した「コンサルティングパートナー」も新設。すでに約10社が参加している。さらに、ビジネスモデルを変革して外販ビジネスを本気で伸ばそうと考えている情報システム子会社などをパートナーエコシステムに積極的に迎え入れ、拡販を図る考えだ。
中山社長は、「クラウド商材は、情シスではなく業務部門にアプローチして成長してきた経緯があるが、それゆえに全社のシステム管理が難しくなってしまっているという課題もある。当社製品の強みは、プラットフォームで横串を通して既存システムも含めてうまく接続し、情シス部門をエンカレッジできること。そういう提案ができる体制の強化を進めていく」としている。