キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ、坂田正弘社長)が、請求書や通知書といった各種帳票のデザインを改善するコンサルティングサービスを開始した。帳票のわかりやすさを向上させることで、業務コストの削減や、成約率を上げるなどの効果が期待できるという。システムに「わかりやすいコンテンツ」という価値を付加することで、プリンタや出力ソフトの機能で差異化を図るのが難しくなっている帳票ソリューションの売り上げ拡大を目指す。(日高 彰)
キヤノンMJでは、プリンタや複合機などの出力機器に加え、基幹系システムから情報を抽出して印刷用のデータを生成するツール「imageWARE Form Manager」などを販売しており、これらを組み合わせることで帳票ソリューション事業を展開している。

ドキュメントソリューション企画課の西尾光一課長(右)と石川貴広課長代理
同社BSソリューション企画本部ドキュメントソリューション企画課の西尾光一課長によると「帳票ソリューションの売り上げは、少しずつではあるがまだ伸び続けているが、競合他社も含め機能的にはほぼ飽和状態」という。サービスの面から新たな付加価値を提供するため、帳票ソリューションにデザインのコンサルティングサービスを加えることにした。
サービス名は「UCDソリューション」という。ここでのUCDは「ユニバーサル・コミュニケーション・デザイン」を指し、情報が正確に伝わるよう、印刷物や画面などのデザインをわかりやすく改善するという考え方を意味する。「情報のわかりやすさ」を定義する基準としては、印刷・デザイン会社やドキュメント関連のベンダーなどで構成される一般社団法人ユニバーサルコミュニケーションデザイン協会(UCDA)が提供する認証制度を採用。UCDA認証では、文字の大きさや色、文書1ページあたりの情報量など、情報のわかりやすさをさまざまな角度から定量的に評価しており、今回キヤノンMJが提供するコンサルティングでも、UCDA認証の取得支援がサービスメニューの一つとして用意されている。
キヤノンMJでは、保険業を中心とした金融や、税務・社会保険関連の公共向けで早期の導入が期待できるとみている。これまで、UCDAの基準に従って帳票デザインを改善した事例では、保険の申し込み書をわかりやすくしたことで記入不備が約半分に減少した、納税通知書のデザイン変更で問い合わせ対応コストを1割削減した、といった効果が確認されているという。
同社では、現在約30億円(ハードウェア販売は含まず)の帳票ソリューション関連売り上げを、2019年度に40億円まで拡大する目標。同課の石川貴広課長代理は「最終的なねらいは出力機器や帳票ツール全体での提案だが、UCDソリューション単体でもニーズはあると考えている」と話し、同社製品のユーザーに加えて、他社のプリンタやツールを使用中の企業や団体に対してもサービスを提供していく考え。当初は、同社と取引がある金融、公共系の顧客に対しての直販が中心となる見込みだが、自治体のシステムを手がけるSIerなどとも順次協業を拡大していく方針。
また、文書のわかりやすさを自動的に評価するソフトウェアの開発も進めている。作成中の文書がUCDの考え方に沿ったデザインかをユーザーがワンクリックで確認できるよう、ワープロソフトのアドイン機能などの形で提供を予定している。