ヤフーグループでデータセンター(DC)事業を手がけるIDCフロンティア(中山一郎社長)は、データエクスチェンジ構想の一環として、ユーザー企業のマーケティングデータをIDCフロンティアのデータマネジメントプラットフォーム(DMP)上で稼働させる。ユーザー同士が競合しない範囲で、さまざまな業種・業態のマーケティングデータを横断的に活用。マーケットやエンドユーザーの動向をより緻密に俯瞰できるようにする。DMPを共有することによって、新しい発見や気づきを得やすくし、ユーザー企業のビジネスの成長に役立ててもらう。(安藤章司)

石田誠司
取締役 流通・小売業を中心に、店舗やソーシャルメディア、ネット通販、電子メール、コンタクトセンターといったあらゆる販売チャネル/顧客接点から得た情報を、DMPによって統合的に分析するケースが増えている。ユーザー企業独自にプライベートDMPを構築するケースが多くみられるが、IDCフロンティアが推し進めるデータエクスチェンジ構想では、ユーザー同士が競合しない組み合わせでDMPを共有するというもの。
プライベートDMPでは、自社のエンドユーザーの分析しかできないが、他社と共有することでエンドユーザーをより立体的、俯瞰的に分析することが可能になる。個人情報を特定できないよう、匿名化する機能を盛り込む。すでに、ポイントカードなどを他社と共有することで、エンドユーザーの消費の流れや市場分析のカバー率を高める動きはある。IDCフロンティアは、マーケティングデータをはじめとするあらゆる“データのエクスチェンジ(交換)”の場所を自社のクラウド上にもつことで、DCサービスの付加価値を高め、ロイヤリティの高いユーザー獲得につなげていく。
データエクスチェンジ上に共有型のDMPを増やしていくと同時に、必要に応じて親会社のヤフーがもつマーケティングデータとの連携も検討していく。ヤフーは国内最大のポータルサイトを運営し、ヤフーIDなどに紐付くさまざまなマーケティングデータを活用して、広告ビジネスを展開している。4月1日付でIDCフロンティアの社長就任が決まっている石田誠司取締役は、「当社のデータエクスチェンジを利用するユーザー企業とヤフーグループのさまざまなマーケティングデータとの連携が実現すれば、新しい発見や出会いを誘発できる」と、ヤフーグループとしての強みを生かすことに意欲を示している。
IDCフロンティアでは、独自に打ち立てた「データ集積地構想」を推し進めており、今回のデータエクスチェンジも、その構想の一環。すでに、クラウド関連ベンダー同士がIDCフロンティアのインフラ上で協業する「クラウドアライアンス」、さまざまな商材をもつビジネスパートナーとユーザー企業のビジネス・マッチングを推進する「エコアライアンス」の二つの取り組みを始めており、今回のデータエクスチェンジは、データ集積地構想の三つ目の柱として育てていく。
データセンタービジネスを巡っては、世界大手のエクイニクスが、国内独立系DC事業者のビットアイル(現ビットアイル・エクイニクス)を傘下に収めるなど大手への集約が進んでいる。IDCフロンティアは、「サーバーやストレージ、ファイアウォールといった機器単体の性能差だけでは、競争に勝てない」(石田取締役)とみており、ユーザー企業のビジネスに直接的に貢献するDMPを連携させたり、DC事業者だけでは揃えられない豊富なアプリケーションやサービスをエコアライアンスによって顧客のビジネスとマッチングする仕組みをつくることで、勝ち残っていく方針だ。