【貴陽発】中国でビッグデータ売買の機運が高まりつつある。中国初のビッグデータ総合試験区に指定された貴州省では、2015年4月に貴陽ビッグデータ取引所(GLOBAL BIG DATA EXCAHNGE=GBDEX)が営業を開始し、同年末までに約300社が会員登録した。中国では、今後も各地域でビッグデータ取引プラットフォームの構築が進むものとみられる。ビッグデータ利活用が普及すれば産業革新が進み、減速している中国経済の底上げにつながる。(上海支局 真鍋 武)
ビッグデータ取引所とは、複数の企業間で行うデータ売買の仲介事業者のこと。政府や企業が保有するデータや、ソーシャルなどの公共データを扱い、個人情報を匿名化するなど、データは売買可能な形に加工して流通させる。グローバルでもビッグデータ取引所の数はまだ少なく、中国にとってもGBDEXが初の例となる。
GBDEXは、中国政府の批准を受けて14年12月に設立した。現時点では政府・金融・各業界・公共など、約30カテゴリに分類したデータを取り扱っている。売買にあたっては、特定のデータを販売するだけでなく、いくつかのデータをまとめたパッケージ商品として販売したり、データベースへアクセスするためのAPIを提供したりするなどの方式を用意している。
約300社ある会員企業には、中国の通信キャリアやアリババ、ファーウェイ、浪潮集団などの大手IT企業が名を連ねる。15年末までの取引総額は約6000万元。データ売買に参加している外資系IT企業はまだ見当らないが、IBMなどは技術支援で関与しているという。GBDEXでは、今後5~10年で会員企業数1万社、1日あたりの取引額100億元を目標としている。

上海ビッグデータ取引所が設立される予定の市北高新園区
約300社の会員を抱える貴陽ビッグデータ取引所 中国国務院は、15年9月5日に「ビッグデータ発展促進行動要綱」を公表し、全国レベルでのビッグデータの活用を進める方針を示した。同要綱では、18年までに中央政府級でデータ交換・共有プラットフォームを普及させることや、20年までにグローバルレベルのビッグデータ関連企業を育成することを掲げている。ビッグデータ取引所は、これを具現化する方策の一つであり、すでにGBDEは、北京や上海、深セン、成都での取引所開設を計画。将来は30か所でビッグデータ取引所を運営する構想だ。また上海や武漢などでは、政府主導でGBDEXとは異なるビッグデータ取引所の設立も進められている。今後は、中国の各地域でビッグデータ取引プラットフォームの構築が進む可能性が高い。
ただし取引を普及させるには、技術開発とその標準化、売買されるデータの情報管理、個人情報保護などの課題もある。GBDEXでは、会員の多くが大手企業のため、現時点で大きな問題は発生していないが、こうしたルールづくりもデータ売買の運営と並行して進めている。今後の利用拡大を考慮すれば、ある程度の厳密なルールを設けたほうがリスクを抑えられる。
なお、日本でも政府が分野・産業を超えたビッグデータ取引の活性化を推進しており、昨年10月には、経済産業省が「データに関する取引の推進を目的とした契約ガイドライン」を公表している。政府主導型のビッグデータ取引所はまだないが、民間企業では、ウイングアーク1stが第三者データ提供サービス「3rd Party Data Gallary」を提供するなど、データ取引の機運は高まっている。