IT業界の団体は多過ぎではないか──。コンピュータソフトウェア協会(CSAJ)の荻原紀男会長は、2年前に現在の役職に就いてから常々思ってきた。IT関連団体は、200ほどあるという。それぞれが目的をもって団体を組織しているとはいえ、数が多いと、国や経済団体への発言機会が限られてしまう。マイナンバー(社会保障・税番号)のようにIT業界に多大なる影響を与える制度が検討されていても、IT関連団体に情報がなかなか降りてこないという問題もある。数が多いと、省庁側も各団体を把握しきれないからだ。この状況を打破すべく、CSAJが各団体に呼びかけ「IT団体連盟(仮)」が発足した。(畔上文昭)
CEATEC JAPAN 2015の開催3日目となる10月9日、「明日のIT政策とソフトウェア産業を考える ~IT関連団体の役割と共通の課題~」というテーマでパネルディスカッションが行われた。パネリストとして登壇したのは、全国地域情報産業団体連合会(ANIA)の長谷川亘会長、コンピュータソフトウェア協会(CSAJ)の荻原紀男会長、全国ソフトウェア協同組合連合(JASPA)の中島洋会長、日本情報技術取引所(JIET)の酒井雅美理事長という主要IT関連4団体の代表である。IT団体連盟への参加を表明している4団体の代表でもある。つまり、IT団体連盟発足の表明を兼ねたパネルディスカッションというわけだ。
IT団体連盟に賛同した理由について、JASPAの中島会長は「中央省庁には、似たような役割をもつ組織がたくさんあるため、横串にしてまとめてほしいと要望したことがある。その返答として、IT関連の団体も多すぎて、どこに声をかけたらいいのかわからない」と逆に指摘されたという。行政や政治に対してIT産業の発言力を強めるためにも、IT関連団体の集結が必要だと語った。JIETの酒井理事長は「IT産業に従事している人は、国内で100万人。その多くが中小企業で、発言力がほとんどない」と現状を分析。一部の大手だけでなく、中小企業にも発言の機会が必要との考えから、今回の賛同に至った。ANIAの長谷川会長は「東京集中が続いている。このままでは地方創生は難しい。地方の発言力も強める必要がある」と考え、IT団体連盟に賛同した。
発起人の荻原会長は「日本の自動車産業は、団体が一つしかない。だから、力をもっている。ITは基幹産業であるにもかかわらず、小さな団体ばかりで、どこでも相手にしてもらえない。このままでは、お互いが不幸になる」と語り、IT関連団体のさらなる参加を呼び掛けた。
当初は各団体を解散させて集結するという構想もあったが、ひとまず“連盟”というかたちにした。年内には、IT団体連盟としての窓口を用意するとしている。
IT団体連盟の活動については、人材の育成、東京五輪で予想されるサイバー攻撃への対応を当面の目的として推進していくという。とくに人材に関しては、若い世代がIT業界を避ける傾向があり、危惧しているといった発言が相次いだ。そのためにも、魅力ある産業に変えていきながら、教育機関にも働きかけるような活動をしていくという。また、多重下請けなどの産業構造の問題にもメスを入れていく考えだ。
主要4団体が参加を表明しているとはいえ、多くの団体がまだ残っている。IT産業の明るい未来に向け、より多くの団体の集結が期待される。

「IT団体連盟(仮)」の発足に先駆けて、参加を表明している団体の代表が、CEATEC JAPAN 2015でパネルディスカッションを実施した。写真左から、長谷川 亘・ANIA会長、荻原紀男・CSAJ会長、中島 洋・JASPA会長、酒井雅美・JIET理事長