シスコシステムズは、5月18日、同日付で同社代表執行役員社長にジェットスター・ジャパン前社長の鈴木みゆき氏が就任したと発表した。同社は昨年11月末に前社長の平井康文氏(現・楽天副社長)が退任して以来、アジア太平洋地域プレジデントのアーヴィン・タン氏が暫定的に社長を兼務していたが、約半年を経て後継者が決定した。
鈴木氏は通信社のロイターでセールスおよびマーケティング職に従事し、1997年には同社東南アジア代表取締役を務めた。インターネットのビジネスが急速に伸び始めた1998年、電子商取引の基盤を提供するブロカットのアジア代表取締役に就任し、IT業界ヘ転身、その後、日本テレコム専務、判例・特許データベース等を提供するレクシスネクシスのアジアパシフィックCEO、KVHのCEOなどを歴任した後、直近では2011年12月から今年3月まで格安航空会社ジェットスター・ジャパンの社長を務めた。
鈴木氏を新社長として迎えた理由についてタン氏は、「われわれの顧客の立場でビジネスをみることができる人物で、スタートアップ企業から大企業まで、さらに日本だけでなくアジア太平洋市場での経験がある」と説明。鈴木氏が経験してきた業界はシスコの主要顧客層と重なり、日本と海外の顧客の視点を熟知している点に期待を寄せている。
鈴木新社長はシスコという会社のイメージについて「インターネットの先駆者であり、接続性に多大なる変革をもたらした会社。将来を見据えたうえで戦略を打ち出している」と述べ、自身がロイターからIT業界へ転身するきっかけとなった、インターネットのダイナミズムの原点ともいえる企業に携わる喜びを語った。
今後の経営方針については「日本のパートナーとカスタマーの考え方を学びながら戦略を立てていきたい」と話すにとどめたが、「社員みんなが生き生きと実力を発揮できる環境づくりに力を注いでいきたい」との趣旨を強調し、平井前社長が取り組んできた働き方の改革をさらに推進していく姿勢を明確にした。同社は場所と時間に縛られないワークスタイルを実現するためのさまざまなソリューションを提供しており、働きやすい職場環境の構築は社員のモチベーションアップだけでなく、顧客に対するモデルケースの提示という意味でも重要なミッションとなる。
また、鈴木新社長は「アメリカの最先端技術を導入するだけでなく、日本の経験を逆に輸出するということもできるのではないかと考えている」とも話し、同社が掲げる「IoE」(Internet of Everything)ビジョンを実現するために、高い技術を有する製造業や、高品質なネットワーク環境など、日本にはグローバルに向けて提供できる先進性が多く蓄積されているとの考え方を示した。
タン氏は社長兼務から外れ、鈴木氏の上長としてシスコのアジア事業強化に注力する。(日高彰)

シスコシステムズの鈴木みゆき新社長と、鈴木氏にバトンを渡したアジア太平洋・日本地域プレジデントのアーヴィン・タン氏