収益構造改善も「3兆円割れ」のNEC
国産大手総合ITベンダー2社の2014年度(2015年3月期)決算が発表された。NEC(遠藤信博社長)は、売上高が前期比1076億円減(3.5%減)の2兆9355億円、営業利益は同219億円増(20.6%増)の1281億円、一方、富士通(山本正已社長)の売上高は同92億円減(0.2%減)の4兆7532億円、営業利益は同313億円増(21.3%増)の1786億円となった。両社とも減収増益で、構造改革が増益につながってはいるものの、売上高は当初計画を下回った。
NECの売上高が3兆円を切るのは、27年ぶり。遠藤社長は、「NECビッグローブの非連結化の減収が響いたが、現事業ベースでは約2%の増収」と、ポジティブな要素を強調した。
ただ、ビッグローブの非連結化による減収は当然ながら織り込み済みだったわけで、売上減の主要因ではあっても、売上計画未達の主要因とはいえない。遠藤社長は、「通信事業者がお見合い状態で、SDNの市場の立ち上がりが想像以上に遅れている。また、グローバルで自然エネルギーの利活用がもっと進んでバッテリの需要が高まると考えていたが、これも思ったほど伸びなかった」と、実際に減収に影響した要因を明かす。ユーザーの投資を待つのではなく、市場形成を主体的に進める攻めの姿勢がより重要になる。
今年度(2015年度)は、現在の中期経営計画の最終年度にあたるが、売上高3兆1000億円、営業利益1350億円、純利益650億円を目指す。好調な公共向けITは、国内の基盤をベースに、海外ビジネスの拡大を図り、「安定」だけでなく、「成長」のためのエンジンとしても育てたい考えだ。また、SDNは、グループ会社を活用したグローバルの拡販体制を強化して案件獲得に力を注ぐ。既存顧客を中心とする大型案件や制度改正による特需などが断続的にあるにせよ、NECにとって国内市場での成長の余地が大きいとはいえない。14年度の海外売上比率は20%にとどまったが、中期経営計画で掲げる「早期の25%実現」が、反転攻勢のためのカギとなりそうだ。
富士通新社長は減益計画で船出
一方、富士通は、主力中の主力事業セグメントである「テクノロジーソリューション」の、とくにSI・サービスで2兆7062億円の売上高(前年度比3%増)、1772億円の営業利益(同1.9%増)を達成し、増収増益となった。しかし、同セグメントのもう一つの柱であるシステムプラットフォーム(ハードウェア)、さらに他の事業セグメントはすべて減収減益となり、厳しさを感じさせる結果となった。
2015年度の業績見通しは、売上高4兆8500億円、営業利益1500億円で、増収減益の計画だ。6月22日に社長に就任する予定の田中達也・執行役員副社長は、「厳しい計画だが、本質的な課題は把握していて、対処のためのプラン策定を急ぐ」と話し、グローバルビジネスの拡大を重要テーマの一つに挙げた。「とくにグローバル市場では事業セグメント横断型の提案が必要。昨年、海外ビジネスのセールス、デリバリを事業軸で横串を通して活動できる体制に再編した。これをベースに収益性を高めることができると考えている」と見通しを語った。(本多和幸)