日本IBM(ポール与那嶺社長)とシスコシステムズ(シスコ、アーヴィン・タン社長)は、「VersaStack発表セミナー」を2月2日に開催した。「VersaStack」は、シスコのサーバーシステム「Cisco Unified Computing System(UCS)」と、IBMのストレージ「IBM Storwize」との組み合わせによる協業ソリューションだ。米国で2014年12月に発表し、今回のセミナーが日本市場での本格始動の号砲となった。(取材・文/柴田克己(フリーランスジャーナリスト))

会場は多くの参加者で埋め尽くされた運用管理のTCOを大幅に低減 データ圧縮コストは約9分の1に
製品説明に先がけて、日本IBMの波多野敦・ストレージセールス事業部事業部長と、シスコの俵雄一・データセンター/バーチャライゼーション事業執行役員が登壇。日本IBMの波多野事業部長は、「垂直統合ソリューションは数多く市場に投入されているが、VersaStackには両社の協業でなければ得ることができない多くのメリットがある」とアピール。シスコの俵執行役員は、「ぜひパートナーの皆さんが中心となって、この価値をお客様に提供していってほしい」との考えを示して、今回の協業ソリューションへの支援を訴えた。
VersaStackを構成するのは、シスコのブレードサーバーシステム「Cisco UCS」、IBMのミッドレンジストレージ「IBM Storwize V7000」を中心としたコンポーネント群である。Cisco UCSは、「ファブリックエクステンダ」と呼ばれる機構によって、サーバー間やストレージ間のネットワークインフラを簡素化。データセンターに存在する多数のシステムコンポーネントを管理するコンソールの「UCS Manager」によって、ポリシーベースで一括管理できるようにする。「ネットワーク」を中心とした管理アーキテクチャによって、「複雑化するシステムインフラの運用管理コスト、TCOを、従来のラックマウントサーバーシステムと比較して大幅に低減できる」(シスコの石田浩之・データセンター/バーチャライゼーション事業 部長)という。
一方、IBM Storwize V7000はコントローラ部で透過的に行われる「リアルタイム圧縮」や、データ配置の自動チューニング機能でコストパフォーマンスの高いデータストア環境を提供するストレージ製品。接続した外部ストレージを仮想化する機能によって、例えば、すでに導入済みの一世代前のストレージシステムに対して、リアルタイムデータ圧縮や自動チューニングといったStorwize独自の機能を適用させることも可能という。この仕組みは、他ベンダーの製品を含む多数のストレージ、サーバー製品に対応し、ビジネス要請に応じたストレージシステムの拡張、更改にも容易に対応できる。同社のデータ圧縮技術は、競合他社と比較してコスト面で優位性をもつという。日本IBMの倉橋輝彦・システムズ&テクノロジー・エバンジェリストは、オラクルのデータ圧縮技術と比較して「Storwizeのデータ圧縮にかかるコストがおよそ9分の1になるケースもある」と説明した。

(左から)シスコシステムズ 石田浩之 部長、日本IBM 倉橋輝彦 エバンジェリスト販社のネットワールドが検証 非常に容易な環境構築を実現
VersaStackソリューションを構成する各製品は、IBMとシスコの両社と両社のディストリビュータからそれぞれ提供される。ユーザーに対するVersaStackとしてのソリューション提供は、両社のパートナーを通じて行われる。製品の技術サポートに関しては、基本的にシスコが窓口となって受け付け、切り分けを行ったうえでIBMと情報共有するかたちになるが、「当社の顧客については当社で直接サポートを受け付けるなど、柔軟に対応していきたい」(日本IBMの佐野正和・システムズ&テクノロジー・エバンジェリスト)としている。
今回のセミナーには、IBMとシスコ、両社とパートナーシップをもつネットワールドの武田光晴・SI技術本部データセンターソリューション課シニアシステムエンジニアも出席した。ネットワールドは、ラボ環境で今回のVersaStackソリューションの組み合わせを実際に構築し、外部ストレージの仮想化による高速化の効果などを検証したという。
環境構築にあたって、システムリファレンス「Cisco Validated Design(CVD)」を活用。VersaStack対応のCVDと、Storwizeのグラフィカルインストーラによって、「非常に容易な環境構築を実現することができた」(武田シニアシステムエンジニア)という。性能検証は、ワークロードとして負荷の高い仮想デスクトップ環境を想定。Storwize単体に加えて、レガシーストレージを仮想ストレージとして接続した場合のパフォーマンスについても測定をし、結果として、レガシーストレージに対してもStorwizeによる高速化の効果が認められたという。
武田シニアシステムエンジニアは、「一世代前のレガシーストレージに対しても、アクセラレーション効果を適用できるStorwizeの拡張性は非常に魅力的だ。当社は、IBMとシスコ両社のパートナーとして、VersaStackにおけるCVD以外のカスタマイズ構成などに対しても積極的に技術支援を行っていきたい」と述べた。
会場には、多くのシステムエンジニアが参加。熱心にセミナーを聴講していた。

(左から)日本IBM 佐野正和 エバンジェリスト、ネットワールド 武田光晴 シニアシステムエンジニア