通信機器メーカーである日本アバイア(川上佳樹社長)は、コンタクトセンター(CC)向けソリューションをサービス型で提供する事業を本格化する。この1月、大手システムインテグレータ(SIer)のSCSK(大澤善雄社長)と提携した。サービス型提供のライセンスを需要に応じてSCSKに貸し出すことによって、SCSKにとっての先行投資を少なくし、サービス型での提案を促す。
日本アバイアはこれまでもCCソリューションをサービス型で提供してきた。しかし、販売会社がライセンスを「買い取り」する必要があって、大きな先行投資を行わなければならなかったので、販売が活性化しなかった模様。その打開策として、日本アバイアはSCSKとの提携に踏み切り、ライセンスの「貸し出し」を刺激剤にして、「CaaS(Contactcenter as a Service)」事業の拡大を図る。製品説明を行ったり、クレーム対応をしたりするコンタクトセンターは、製品発売直後に電話が集中するなど、時期によって、通信インフラの需要が大きく変動する。そのため、インフラを柔軟に増やしたり減らしたりすることができるクラウドの採用が活発になっており、クラウド対応に出遅れた日本アバイアにとって、サービス型での提供に本格的に乗り出すことは急務だった。
同社は、「(サービス型提供に)シフトしないといけないという危機感」(朝枝浩毅・クラウドビジネス・デベロップメント・マネージャー)を募らせたことから、クラウドパートナーを募集するプログラムを展開。そして、以前から日本アバイアの有力販社であるSCSKとのパイプを生かして、「経営トップ同士の話し合い」(同)というかたちでクラウド提携にこぎ着けたという経緯がある。日本アバイアは今後、SCSK以外にも、SIerやクラウドサービスプロバイダを中心に、販売パートナーの獲得に動く。東京五輪の開催でCC市場が伸びるとみる2020年までに、CCソリューションのサービス型提供での売上比率を50%に引き上げることを目指すという。
地方のSIerと組む
SCSKでソリューション事業を束ねる田財英喜・上席執行役員は、「今回の日本アバイアとのクラウド提携によって、使った分だけを課金するというサービス型ならではの提案をする機会を得た」と捉え、営業活動に注力していく。提案の現場を仕切るカスタマーサービス部の鷲尾純・サービス第三課長は、「『(問い合わせ用の)電話番号を増やしたい』といった、フロント側の要望に対応しやすいので、例えば、商品ごとに電話番号を付番するなど、より細かい提案ができるようになった」とみる。
SCSKが取り組もうとしているのは、CC向け事業をビッグデータと連携させることだ。録音した「お客様の声」を解析し、話から家族構成や日頃の行動パターンをみつけ出すことによって、案件の付加価値を高め、利益率の向上につなげようとしている。田財上席執行役員は、「アバイア製品の導入実績を、現在の5200席から3年後には1万席ほどに引き上げたい」と意気込みをみせる。SCSKと手を組んで販売活動を行うパートナーを獲得し、コンタクトセンターが多い地方のSIerなどを取り込んで、販売網を構築する。(ゼンフ ミシャ)

(左から)日本アバイア 朝枝浩毅 マネージャー、
SCSK 田財英喜 上席執行役員、
SCSK 鷲尾純 サービス第三課長