東京23区を中心に会員制カーシェアリングサービス「カレコ・カーシェアリングクラブ」を提供しているカーシェアリング・ジャパンは、2008年の設立以来、予約管理システムのデータベース(DB)にオラクルが提供する「MySQL」を活用している。パフォーマンスが高いことはもちろん、日本オラクルの手厚いサポートが選択の理由となった。予約管理システムは、今年春をめどにリニューアルを計画していて、MySQLも最新バージョンにリプレースすることを検討している。
【今回の事例内容】
<導入企業>カーシェアリング・ジャパン2008年8月、カーシェアリング事業を手がける会社として設立した。サービス名にある「カレコ(careco)」は、「car(クルマ)」と「eco(エコロジー)」を合わせたもの。1台のクルマを複数人が共有することでムダを省くという意味が込められている。
<決断した人>システムオペレーション室
佐々木隆 室長
会員専用サイトの企画・運営に携わっているほか、社内システムの運営も担当している
<課題>「カレコ・カーシェアリングクラブ」の会員が増えることを想定して、サービス開始当初からRDBMSに重きを置いていた
<対策>オラクルのRDBMS「MySQL」を導入。今年春の更新時には最新バージョンにリプレースする予定
<効果>MySQLの機能面だけでなく、サポートもしっかりとしていることから、会員へのサービス強化につながっている
<今回の事例から学ぶポイント>会員のサービス強化に力を注いでいるなかで、システム担当者にとってRDBMSが重要な役割を果たしている
クルマの台数は1000台超
カレコ・カーシェアリングクラブは、東京23区をはじめとして東京都下や神奈川県、埼玉県、千葉県などでサービスを提供している。会員になれば、分単位でクルマを利用することができる。予約は簡単だ。PCや携帯電話などから会員専用サイトにログインして、車種やエリア、利用したい時間などの条件を指定し、利用可能なクルマを選択する。利用時には、携帯電話などがクルマのドアを開閉する鍵の役割を果たす。
利用料金は、ベーシックプランではコンパクトカーで10分あたり130円で、最短30分からとなる(390円)。6時間以上の料金なども設定されている。個人向けの月会費は980円で、同額の無料利用分がセットになっている。法人向けには、月会費3万9800円というゴールドプランがあり、同額分の無料利用が可能なほか、未消化の無料利用分は翌月に繰り越される。
このような手軽さで、2008年の設立以来、年を追うごとに会員が増加。クルマの台数も増えていて、今では1000台を超えるほどの規模に成長している。
システム構築は自前
会社の設立以来、一貫して追求しているのがIT活用によるサービス強化だ。分単位の利用を考慮して、クルマの予約や貸し出し、返却など、すべてシステムで自動化している。また、サービス開始以降、およそ6年間の会員情報をDB化していて、利用履歴などから各会員に対して手厚いサービスを提供することに活用している。会員も、自身の利用履歴などを会員サイト上で確認できるようになっている。
分単位でサービスを提供するというビジネスの特性から、カーシェアリング・ジャパンは、当初からリレーショナルデータベース管理システム(RDBMS)がシステムの重要な基盤になると考えていた。
佐々木隆・システムオペレーション室室長は、「基本的に自前でシステムを構築しており、いかに会員に対して価値のあるサービスを、しかも効率的に提供できるかということに重きを置いている。そのため、サービスを提供するにあたって、こだわったのは顧客情報の管理だ。パフォーマンスなどの製品面に加えて、サポートがしっかりしているという人的な面も重視した」という。同社が選んだのは、オラクルのRDBMSであるMySQLだった。
導入は、MySQLに関する販売やコンサルティングで定評のあるソフトエイジェンシーに依頼。佐々木室長は「(ソフトエイジェンシー代表取締役の)立岡佐到士さんには、システムを強化するにあたって、最適なアドバイスをもらっている」と評価している。
スマートフォンアプリも開発
カーシェアリング・ジャパンは、「MySQL Standard Edition 5.5」を現段階で導入している。最近では、「会員が増えてキャパシティが厳しくなったので、サーバーを1.5倍程度に増強した」(佐々木室長)という。今後も会員数は伸びていくと予想できることから、「次のシステム更新時に、MySQLを最新バージョンへとリプレースすることを検討している」と語る。
現在進めているのは、スマートフォンアプリの開発だ。「現段階では、パソコン用サイトとフィーチャーフォン用サイトで予約を受けつけている。ただ、スマートフォンからのアクセスが多いことから、会員の利便性を考えてアプリの開発を進めている」と、佐々木室長はいう。
今ではカーシェアリング自体が浸透しつつあり、会社員が業務で利用したり、学生やファミリーがドライブを楽しんだり、主婦が買い物で利用したりと、さまざまな使い方が出てきている。「同じ会員が1日に何度も利用しているケースもある。レンタカーと違って、いつでも利用できて、料金は使った時間分だけでいい。今後も新しい使い方が生まれるのではないか」と、佐々木室長は期待している。そのためには「会員に対して、新しいサービスを提供し続けていかなければならない」ことを念頭に置いている。(佐相彰彦)