大手システムインテグレータ(SIer)の日本ユニシス(黒川茂社長)は、2015年4月に開始する次期中期経営計画を打ち出し、「単なる人月サービスからの脱却」(黒川社長)に取り組む。コア事業であるICT(情報通信技術)インフラ領域においては、「Amazon Web Services(AWS)」など他社のクラウドサービスの構築を含め、本格的なクラウド対応に動く。新規サービスの領域では、筆頭株主の大日本印刷(DNP)と連携したデジタルマーケティングの事業展開に力を注ぎ、売り上げを現在の100億円強から300億円規模に伸ばす目標を掲げている。次期中期経営計画の最終年度である2017年度(18年3月期)には、売上高3200億円を目指す。14年度の売上高は2850億円の見込みだ。

日本ユニシス
黒川茂
社長 次期中期経営計画の実行にあたって、中核的な役割を担うのは、ICTインフラ構築を得意とするグループ会社のユニアデックスだ。同社の入部泰社長は、15年度から、ユニアデックス独自のクラウドサービス「U-Cloud」に加え、AWSをはじめとする他社クラウドもポートフォリオに入れて売り込むという「クラウドフェデレーション」事業に参入することを明らかにしている。「複数のクラウド間のデータ連携や認証、セキュリティといった付加価値を追加して、ミッションクリティカルなシステムにクラウドを取り入れたいというユーザー企業に提案する」(入部社長)と語る。現在は、技術面での準備に取り組んでおり、エンジニアのクラウド構築のスキルを磨いているところだ。

ユニアデックス
入部泰
社長 次期中期経営計画では、DNPと連携したデジタルマーケティングや、地域医療連携ネットワークなど社会インフラ系サービスといった「新規」の事業展開に力を注ぐ方針を定めているものの、売上規模に関しては、ICTインフラ事業が引き続き、圧倒的なウェイトを占める。そういうこともあって、日本ユニシスグループの関係者が「(次期中期経営計画には)発表するほどの目新しさがない」と指摘するように、抜本的な事業改革の切り口が見出せていないようにみえる。しかし、大胆にビジネスの舵を切るというよりも、ICTインフラ事業の本格的なクラウド対応に取り組むことによって、あらためて売上高3000億円超を目指すという“地味な”目標から、システムエンジニア(SE)出身である黒川社長の「現実性にこだわる」姿勢を読み取ることができる。(ゼンフ ミシャ)