2014年は、ASEAN加盟国にビジネスチャンスを求めて進出する日本のITベンダーが急増した。シンガポールやタイ、インドネシア……。さまざまな国の市場に数多くのITベンダーが挑んでいる。国によってさまざまなASEANのIT事情。このコーナーでは、IT産業の可能性を見定めるうえで重要なデータをもとに、ASEANのITの“キホンのキ”を把握しておこう。
Chapter 1
インターネット普及率 シンガポール、マレーシア、ブルネイが突出
IT産業を形成するために欠かすことができないインフラが、インターネットだ。クラウドの普及で、ネットワークを通じたデータのやりとりが大前提になりつつある今、各国でどの程度インターネットが整備されているのかは、まず最初に押さえておきたい。下の図は、過去12か月の間に、デバイスを問わずインターネットを利用したことがある人の比率を国別に示したものだ。この図をみると、シンガポールとマレーシア、ブルネイ・ダルッサラーム国(ブルネイ)が高い。ブルネイは2008年から2013年の間でインターネット普及率が約20ポイントも高まり、ASEANのなかで伸び率トップだった。
Chapter 2
携帯電話普及率 国を問わず高水準、プリペイド式が貢献
携帯電話は、全世界でパソコンよりも存在感が高まりつつあるが、その普及率はどうか。下の図は、全人口に占める携帯電話の契約者比率を示したもの。数字はプリペイドSIMカード式の携帯電話の契約を含み、回線の種類はアナログ、3G、4G問わないこともあって普及率はASEANのどの国も総じて高いことがわかる。これはプリペイド式が広く受け入れられている効果だ。実に、ASEAN加盟の10か国中、8か国で100%を超えていて6か国は日本を上回っている。パソコンの普及率は携帯電話よりも低く、ビジネスインフラが整っているデバイスは、ASEANではパソコンよりも携帯電話が上だ。
Chapter 3
固定ブロードバンド普及率 北米、欧州に比べてかなり低水準
インターネットと端末の次に大切なのが、インターネットの回線速度。ネットはできるが、速度が遅い──。東南アジアでそんな経験をした人も多いだろう。下の図は、DSL系、光ファイバーなどブロードバンド回線の種類を問わず、通信速度が256kbpsを超えるインターネット回線に加入している比率を示したものだ。Chapter1、2のインターネットと携帯電話の普及率に比べて低い状況にある。東南アジアの回線事情は悪く、発展途上であることが一目瞭然。インターネットと端末が普及していても、大容量のデータのやりとりや、重いウェブアプリケーションの利用には、まだ適していない。
Chapter 4
IT競争力 異常に高いシンガポール
その国で総合的にみてIT環境がどの程度整備されているか。それを表すのが「IT競争力」(下図)だ。非営利団体の世界経済フォーラム(WEF)が毎年調査している。ITインフラの整備状況、個人・法人を問わずITの活用度合い、市場としてのIT産業の可能性など、合計68項目の基準にもとづいて各国ごとに評価する。この数値は、アジアに比べて北米や欧州の先進国が上位にランクインしているが、そのなかでもASEANで気を吐いている唯一の国がシンガポールで、フィンランドに次ぐ2位。日本の21位よりも大きく上回る。ASEAN加盟国のなかで、上位50位に入るのはシンガポールだけだ。