三菱日聯融資租賃(中国)は、三菱UFJリースの中国現地法人として、リース業務を展開している。同社は従来、Excelを活用して与信管理や契約管理を行っていたが、契約件数の増加につれてミスが発生するなど、人手の管理に限界がみえてきた。そこで、上海電通信息服務(ISID上海)のリース業向け基幹システム「Lamp」を導入して、業務を効率化。導入後に続くシステムの追加開発にも、ISID上海の手厚いサポートが功を奏している。
【今回の事例内容】
<導入企業>三菱日聯融資租賃(中国)三菱UFJリースの中国現地法人として2008年に設立。現在の従業員数は37人。中国でファイナンスリースなどのリース業を展開している
<決断した人>佐々木章吾
副総経理
人事・経理・情報システムなど、営業以外の部門をすべて統括している。専門領域は財務
<課題>リースの契約件数が増えて、人手では与信管理や契約管理を効率的に行えなくなった
<対策>上海電通信息服務が提供するリース業向け基幹システム「Lamp」を導入
<効果>リース業務の効率化を実現し、契約件数が増えてもミスが発生することがなくなった
<今回の事例から学ぶポイント>システムは絶えず進化を続けていくので、長期的につき合っていける信頼できるITベンダーを見つけることが大事
人手の管理には限界
2008年設立の三菱日聯融資租賃(中国)は、中国で企業向けにリース業務を展開している。設立当初から同社は利益を追求する姿勢で、コスト削減に高い意識をもっていた。そんなこともあって、リースの与信管理、契約管理といった業務のシステム化を先延ばしにし、従業員がExcelを活用して人手で管理していた。
しかし、リースの契約件数が100件を超えたあたりから、人手の管理には限界がみえ始めた。限られた人数で多くの案件を管理しなければならない状況にあって、作業ミスが目立ってきたのだ。
また、同じ時期に同社では、新たに建機向けのベンダーリース事業を開始することを予定していた。佐々木章吾副総経理は、「建機向けのベンダーリースは、従来のファイナンスリースとは異なって、1案件あたりの金額が小さく、契約件数をいかに稼ぐかが重要になる。契約件数が、これまで以上のペースで増加していくことは確実だった」と当時を説明する。従来のExcelによる管理では難しいと容易に想像できたこともあり、三菱日聯融資租賃(中国)は、システム導入による効率化を検討した。
導入するにあたって、同社は要件を策定した。申請から決裁までの管理や、与信残高を契約顧客ごとに把握する「与信管理」、案件・契約の進捗を把握する「契約・進捗管理」、請求業務や回収業務を円滑に進めるための「請求・回収管理」の機能を備えていることを不可欠な要素とした。一方、スクラッチで開発するというやり方は選択肢に入れなかった。どうしてもコストが高くなるからだ。
ITベンダーの選定にあたっては、初めから日系IT企業に的を絞った。佐々木副総経理は、「中国資本のIT企業を日本人の経営者が詳しく調べることは難しい。また、日系の金融機関にシステムを納入した実績があって、安心して任せられるIT企業を選びたかった」と説明する。
その後、リース業向け基幹システムを提供する日系ITベンダー2社で選定。ベンダー側からのプレゼンテーションを経たうえで、最終的に上海電通信息服務(ISID上海)の「Lamp」を導入することに決めた。
止まないシステムの追加開発
三菱日聯融資租賃(中国)がLampに決めた理由は、大きく分けて二つある。一つは、システムの機能面だ。Lampは、要件としていた与信管理、契約・進捗管理、請求・回収管理の機能はもちろんのこと、金利の変動や、顧客の契約条件の変更にも柔軟に対応できる機能を搭載。「もう一方のITベンダーの製品の場合、こうした機能を搭載するためには、追加のカスタマイズが必要で、さらなるコストがかかった」(佐々木副総経理)という。
理由のもう一つは、ISID上海がリース業務の豊富な経験・ノウハウをもっていたことだ。ISID上海では、リース業向けに23人の部隊体制を敷いており、幹部層の日本人だけでなく、中国人の従業員もリース業に精通している。三菱日聯融資租賃(中国)の場合、導入を決裁するのはマネジメント層の日本人だが、実際にシステムをメインで活用するのは中国人のローカルスタッフで、運用や保守、導入後のシステムの追加開発などを考慮に入れれば、現場の人間と密にコミュニケーションが取れる人材が豊富であることは魅力的だった。
導入はおよそ3年前に行われ、すでに成果が出ている。佐々木副総経理は、「契約件数は導入時の約10倍に増えているが、作業ミスはほとんど起こっていない。新しくシステムを導入していなかったら、確実に支障が生じていただろう」と語る。効率化によって、従業員はリース業務の管理ではなく、営業などの本来の業務にリソースを集中することができる。
ISID上海のサポート体制も功を奏した。三菱日聯融資租賃(中国)では、事業の成長や業務スキームの変更、中国の金融制度の改正などに合わせるために、導入後もシステムの追加開発が途切れたことがない。この点に関して、佐々木副総経理は「現在でも、ISID上海の6人のSEがいつもシステムをみてくれているので、安心して任せることができる」と満足げだ。2013年には、建機向けベンダーリースで協業している代理店向けに、Lampと連携する入力用のウェブシステムを追加開発した。さらに今後は、Lampと会計システムとの連携も視野に入れている。
ISID上海を選択したことで、業務効率化に成功し、絶え間なく続く追加開発にも万全な体制を敷いた三菱日聯融資租賃(中国)。佐々木副総経理は、「まるで社外に信頼できる部下がいるようだ」と頬を緩ませた。(上海支局 真鍋武)