米インテルと日本法人のインテルが主催するソフトウェア開発者向けイベント「インテル ソフトウェア・カンファレンス 2014 東京」が、10月30・31日の2日間にわたって開催された。カンファレンスでは、最新・次世代のマイクロアーキテクチャの概要や、インテルのソフトウェア開発製品の最新情報を提供。米インテルのソフトウェア開発者をはじめ、各分野のスペシャリストが最新テクノロジーを紹介した。果たしてインテルは、参加したソフトウェア開発者に対して何を伝えようとしたのか。「高速で動作するソフトウェア開発には『並列化』がカギを握る」と訴える米インテルのソフトウェア開発製品部でディレクターを務めるジェームス・レインダース・エバンジェリストに話を聞いた。(取材・文/佐相彰彦)

ジェームス・レインダース
エバンジェリスト ──まず、インテルのなかで「エバンジェリスト」というポジションがどのような役割を果たすのかを教えてほしい。 レインダース ソフトウェア開発製品部でスーパーコンピュータを担当し、エバンジェリストとして、パートナー企業のソフトウェア開発者などとコミュニケーションの向上を図ることが主な役割だ。以前は、スーパーコンピュータといっても搭載するプロセッサの数が限られていたが、今では数万単位のプロセッサで並列プログラミングを行っている。スーパーコンピュータ以外でも、CPUがマルチコアやデュアルコアなど複数のプロセッサをもつようになった。スーパーコンピュータの知識を生かして並列プログラミングのメリットを訴えていかなければならないと判断している。
──インテルは、どのようにして並列化を推進していくのか。 レインダース 当社には、ソフトウェアの並列化に適した「インテル Parallel Studio」や組み込み向け「インテル System Studio」など、スーパーコンピュータからモバイル端末まで幅広く対応できるように開発ツールを提供している。しかも、最新のハードウェアを生かすように設計されているので、ソフトウェア開発者に大きなメリットを与える。
──「メリットを与える」について、もう少し具体的に聞かせてほしい。 レインダース 日本にはソフトウェア開発者が約100万人いるといわれるが、そのうちスーパーコンピュータを使ったHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)分野に携わっている人は1割程度とみられる。そのようなソフトウェア開発者は、自身で開発した重要なアプリケーションを高速で処理したいと考えている。当社のソフトウェア開発ツールを使えば、ソフトウェア開発者が求める高速処理を並列化などによって実現するというメリットがある。しかも、対象はスーパーコンピュータだけにとどまらない。モバイル端末のアプリケーションを動かす場合でも、ローカル(端末)とクラウド上という2種類の方法がある。その処理を高速化するのに必要なのが並列プログラミングで、それを実現するのが当社のソフトウェア開発ツールというわけだ。
──インテル Parallel Studioの新バージョン「インテル Parallel Studio XE 2015」の提供を開始したが、新機能と競合製品との優位性は何か。 レインダース 「インテルC++/Fortranコンパイラ」「パフォーマンス分析ツール」「エラー検出ツール」「スレッド化アドバイザー」「パフォーマンス・ライブラリ」をバンドルして、「インテル Xeon Phi」など最新のプロセッサに対応した。競合製品との優位性についてはポイントが二つある。一つがハイパフォーマンスで信頼性の高いC/C++、Fortranアプリケーションを開発できる点、もう一つが高度な並列化が可能な点だ。
──インテル Parallel Studio XE 2015は並列化を実現するので、ソフトの開発者は並列化のノウハウを習得する必要がなくなるのか。 レインダース 前述したように、ソフトウェアを高速で動作させたいというのが、ソフトウェア開発者の共通の悩みになっている。その課題を解決するのが並列化で、CPUのマルチコア化が進んだように、どのソフトウェアを動かす際にも並列化があたりまえの世界になってくるだろう。開発ツールで高度な並列化を実現するとはいえ、並列化のノウハウを習得する必要は出てくるはずだ。
──並列化は誰でも簡単に習得できる技術なのか。 レインダース スーパーコンピュータ関連に携わっていれば問題ないが、実は簡単に習得できる技術というわけではない。だから、並列化をコンパクトに始めて経験を積んでいくことが望ましいと思う。ソフトウェア開発者にとっては、将来、絶対に必要な技術になるので、今から取り組むことをお勧めする。
取材を終えて
ソフトウェアの並列化にメリットがあるのは確かだが、ソフトウェア開発者の多くがノウハウを習得しているかといえば、そうとは言い切れない。そのため、インテルでは、ソフトウェア開発ツールの新バージョンであるインテル Parallel Studio XE 2015で最新のハードウェア環境に最適な並列化を実現できるようにした。スマートフォンでもマルチコアの採用が進む時代において、インテルは並列化を実現するソフトウェア開発ツールを提供するとともに、エバンジェリストによる啓発活動を行うことで、パートナー企業とともに、ソフトウェアの新しい姿を見出そうとしているのだ。