佐賀県を中心に物流サービス事業を展開しているロジコム(鳥屋正人社長)は、業務システムの老朽化や、サーバーのサポート切れに対処するために、日本マイクロソフトの「Windows Server 2012」を導入した。地元SIerのソアー(金子晴信社長)に構築を依頼し、システムの複製を容易にする「Hyper-V レプリカ」機能を活用するなどして、わずか2週間でシステムを仮想環境に移行。同時に、DR(災害復旧)対策も実現した。
ユーザー企業:ロジコム
1962年に創業。佐賀県を中心として、九州で物流サービスを手がけている。従業員数は193人(2013年1月現在)で、8か所の営業所に175台の運送車両を保有している。
製品提供会社:ソアー
製品名:「Windows Server 2012 Hyper-V レプリカ」
【課題】停止が許されない業務システム
ロジコムは、佐賀県を中心として、九州全域で物流サービス事業を展開している。8か所の営業所を構え、合計175台の車両を配備している。鳥屋社長は、およそ20年前からITの活用を積極的に進め、メールシステムや社内のイントラシステムだけでなく、物流システムや配車システムなどの業務システムを構築してきた。
しかし、長年利用してきたこれら業務システムは老朽化が進み、サーバーのサポート終了も迫ってきたこともあって、ロジコムは業務システムの刷新を迫られることになった。
システムを刷新するにあたっての課題は、主に三つあった。一つは、コストだ。鳥屋社長は、「当時、原油価格が高騰してトラックの燃料費が嵩んでいた。ITシステムの刷新には数千万円かかるが、それほどの資金を投じることは危険だった」と振り返る。
二つ目は、業務システムを停止できないことだ。ロジコムでは、顧客の約50%が建設・建設機器レンタル会社で占められており、「緊急の配車を要請されることが多く、一日でもシステムを停止すれば、お客様に迷惑をかけてしまう」と鳥屋社長は危惧していた。
三つ目が、DRの観点だ。「九州は大雨や台風が多いうえに、佐賀県は平地が多く、社屋が浸水したこともあった」(鳥屋社長)。だからこそ、バックアップシステムを構築する必要があったのだ。
鳥屋社長は、これまでシステム管理を委託していた企業に相談したが、「従前のシステムを完全に入れ替えることを提案され、コストが高かった」ので断念した。そこで、以前から社内の事務機などで取引のあったソアーに相談した。
ソアーの松尾真澄システム担当係長は、「コスト削減の観点から、現行のシステムと比べて物理サーバーが少なくて済み、業務システムを停止することなく再開発できる仮想化を提案した」。「Windows Server 2008 Hyper-V」と、「VMware」を検討の対象としたが、DRの問題は解決できないとあって、決断には至らなかった。

ソアーの松尾真澄システム担当係長(左)とロジコムの鳥屋正人社長【決断と解決】わずか2週間でシステムを移行
検討を開始してから、およそ2年が経過した時点で、決断のきっかけが訪れた。12年9月に「Hyper-V」が強化され、レプリケーション機能「Hyper-V レプリカ」が追加された「Windows Server 2012」の販売が始まったのだ。従来のレプリケーションとは異なり、特別なハードウェアが不要で、システムをファイルとしてコピーすることによって、簡単に複製できる。これを活用すれば、仮想環境上に簡単に業務システムを移行して、システムを停止せずに、並行して新しい業務システムを開発することが可能だ。
また、遠隔地にシステムをバックアップして、DR対策も講じることができる。「以前システムの管理を委託していた企業の見積もりと比べて、約3分の1のコストだった。加えて、システムを止めることなく、DR対策も実現できるとわかって、導入を即決した」(鳥屋社長)という。
実際の導入は、今年3月に開始し、わずか2週間でシステムを仮想環境に移行した。松尾係長は、「富士通マーケティングが提供している、あらかじめOSとアプリを設定してユーザーに提供する仮想化ソリューション「AZBOX」を活用したことで、短期間での仮想環境への移行を実現した」と語る。
今回、遠隔地にバックアップサーバーを配備し、「Hyper-V レプリカ」を使って、システムを簡単に複製したので、DR対策も万全なものとなった。バックアップする際に仮想システムを停止することがないので、従業員に負担はまったくかからない。現在は、システムの再開発を進めているが、「通常業務にまったく支障をきたすことがない」(鳥屋社長)と満足げな様子だ。(真鍋武)
3つのpoint
システムを停止せずに済む
短期間で仮想環境に移行
コストが安い