衣料品などを取り扱うコンセプトショップ「BIRDHOUSE」を運営しているカム・オフ・ウェル（原和広代表取締役）は、店舗のオープンに合わせてエスキュービズム（薮崎敬祐社長）が提供するタブレット型POSシステム「EC-Orange POS」を導入した。タブレット端末をPOSレジの代替として利用することで、ハードウェアにかかるコストを削減。さらに、実店舗とECサイトのデータが連動する仕組みによって、在庫管理の手間を軽減している。

【課題】妥協せざるを得ない

　カム・オフ・ウェルは、ハイセンスな衣料品や、世界中から収集した雑貨、観葉植物など、ライフスタイルにかかわる商品全般を取り扱うコンセプトショップ「BIRDHOUSE」を港区・青山で運営している。店舗がオープンしたのは、2013年4月。開店するにあたっての重要課題はPOSシステムの選定だった。川崎勝元ディレクターは、「オープンする半年ほど前から、POSシステムを探していた。十数社のPOS製品を検討し、実際に5社ほどデモンストレーションを体験するなど、ニーズに合う製品を懸命に探していた」と当時を語る。

　一般的にPOSシステムは、ハードウェアの導入費用を含めると、単店舗でも100万円ほどのコストがかかる。新規にオープンするだけに、後になって、システムに問題が発生したりして、改修しなければならなくなるということは避けたかった。しかし、ニーズに合う製品は、なかなか見つけることができなかった。

　カム・オフ・ウェルがPOSシステムを導入するにあたって必要条件としていたのは、コストが安いこと、お店の雰囲気に合うスタイリッシュなものであること、ECサイトとデータが連動して、在庫管理を容易に行うことができることだ。検討したシステムには、タブレット端末をPOSレジとして使用するものがあり、見た目がスタイリッシュで、ハードウェアの費用を削減できるものはあった。しかし、ECサイトと連動するものはなく、そのPOSシステムを導入しても実店舗の在庫管理とECサイトの在庫管理を別々にこなさなければならなかった。

　「『BIRDHOUSE』は単店舗で、多くの在庫をもたないうえに、扱っている雑貨は手づくりの一点ものが多いので、実店舗でお客様が購入して、在庫がなくなったときに、すぐにECサイトの在庫に反映できるようにしておかなければならない」（川崎ディレクター）。半年間かけてもニーズに合う製品は見つけることができず、結果的に妥協せざるを得ず、ECサイトと実店舗で、在庫管理を二重に行わなければならないPOSシステムを契約することを迫られた。

【決断と解決】iPadで情報を一元管理

　しかし、川崎ディレクターは、契約直前まであきらめず、要件に合うPOSシステムを探し続けた。だから、エスキュービズムが提供する「EC-Orange POS」を見つけた時には、「即座に導入を決意した」そうだ。

　「EC-Orange POS」は、iPadなどのタブレット端末をPOSレジとして利用する小売業向けのPOSシステムだ。これまでエスキュービズムが提供してきたECサイト構築ソフト「EC-Orange」をもとに設計しており、ECサイトと実店舗のデータが連動するので、タブレット端末上から商品情報、顧客情報、販売情報、在庫管理を一元的に管理できる。カム・オフ・ウェルでは、「EC-Orange」でECサイトを構築し、POSシステムとして「EC-Orange POS」を導入した。

　タブレット端末の利用によるハードウェア費用のコストダウン、スタイリッシュなデザイン、データの連携に加えて、扱いやすいUI（ユーザーインターフェース）が導入を後押しした。エスキュービズムソリューション事業部第一開発部POS/OESグループの大工峻平氏は、「タッチ操作するときの指の反応領域を、通常のタブレット端末よりも広くするなど、小売業の方が使いやすいように独自仕様を加えている」と説明する。

　店舗が今年4月にオープンしてから、POSシステムは安定的に稼働。「実店舗はもちろん、ECサイトでの売り上げも順調に伸びていて、このまま成長すれば、ECサイトだけでも十分な収益を上げられそうだ」（川崎ディレクター）という。実店舗とECサイトで販売の割合が変動しても、データが連動しているので、在庫管理を容易に行うことができる。「長期間にわたってPOSシステムを探し続けた甲斐があった」と、川崎ディレクターは手放しで喜んでいる。（真鍋武）