クラウド型ファイルサーバー運用サービスを提供するベンダーとしてトップ3に入るクラウドテクノロジーズ(谷本勲社長)は、拡販に向けてパートナー営業を強化した。今年に入って営業部門に販社支援を手がけるチームを新設。昨年まで数社規模だった販社が今年6月中旬の時点で15社にまで増えている。今年末には、現状の2倍にあたる30社まで増やす計画を立てている。ユーザー企業がクラウド型ファイルサーバーを利用する傾向が高まっていることからも、販社の増加でクラウド型ストレージ市場で高いシェアを獲得する可能性がある。

林 久樹
マネージャー クラウドテクノロジーズが提供する「ファイルサーバクラウド」は、同社のキガビット対応の高速スループットアプライアンス「サファイア」によって回線の遅延を防ぎ、大容量データのアップロードやダウンロードをスムーズに行うことができる。1TB(テラバイト)の利用で月額料金が6万2000円など、競合と比べて低価格を実現しているほか、10TBまでデータを保存できるなど大容量化にも対応していることが売りだ。
2010年12月の本格提供から今年6月までの時点で、ユーザー企業数は150社を超える。サービス開始当初は、100人以下の中小企業の利用が中心だったが、最近は大企業も導入するようになっている。昨年までは、同社の直販部隊を中心に販売していたが、ユーザー企業を一気に増やしていくためには、間接販売モデルを構築する必要性が出てきた。そこで、今年初めに販売を担当するセールス&マーケティング本部の販売部門に販社とともにビジネス拡大を図っていく「パートナー営業チーム」を新設した。
そのチームの責任者を務める、林久樹・セールス&マーケティング本部パートナー営業チームマネージャーは、「昨年まで数社だった販売パートナーが、最近になって急激に増えた。今では15社に達している」と自信をみせる。チームの設置と同時期にパートナープログラムを策定。「ファイルサーバクラウド」を自社ブランドで販売する「OEM」、販売からサポートまでを手がける「Executive」、販売を中心に手がける「Distributor」の3種類のプログラムを用意し、アプリケーション開発ベンダーやSIer、ディストリビュータなどを販社として獲得した。
現在、クラウド型ファイルサーバー運用サービスベンダーとしてビジネスを拡大しているのは、「Bizストレージファイルサーバー」をもつNTTコミュニケーションズ、「セキュアSamba」を提供するスターティアなど。クラウドテクノロジーズは、この2社とシェア争いを繰り広げている。林マネージャーは、「今年末までに販売パートナーを30社にまで増やし、一気に拡販する」との方針を示す。まずは、同社の期末である今年8月に「ユーザー企業を現状から30社増やす」ことを目指している。
クラウド型ファイルサーバーをはじめ、オンラインストレージやクラウド型ストレージなどのサービス市場は、成長傾向にあるとの見方が強い。調査会社のIDC Japanによれば、2011~2015年の成長率は年10.3%で成長し、15年には369億円まで拡大すると予測している。また、企業によるクラウド型ストレージサービスの用途については、ユーザー企業が共有ディスクとして利用するケースが多くなっている。現状は、バックアップ用途として使われているケースが多いが、今後はファイルサーバーとして使われることになるわけだ。その意味では、バックアップを主流としているクラウド型ストレージと一線を画したファイルサーバー運用サービスを導入するユーザー企業が増える可能性は十分にある。(佐相彰彦)