三井不動産グループの中国・上海法人「三井不動産(上海)投資諮詢」は、技研商事インターナショナルのエリアマーケティング分析ツール「MarketAnalyzer(マーケットアナライザー)」を採用した。三井不動産上海法人では消費市場が急拡大している中国での大型商業施設への不動産投資に取り組んでおり、不動産開発における商圏分析ツールとして「MarketAnalyzer」を活用。投資対効果が最も大きいエリアを探し出すためのツールとして、三井不動産上海法人は「なくてはならない存在」と高く評価している。
ユーザー企業:三井不動産(上海)投資諮詢
三井不動産グループの中国法人「三井不動産(上海)投資諮詢」は、中国での不動産開発を手がける。「MarketAnalyzer」は、中国での大規模商業施設の開発投資の選定に役立てている。
プロダクト提供会社:上海優事商務諮詢/技研商事インターナショナル
プロダクト名:商圏分析システム「MarketAnalyzer」

「MarketAnalyzer」(中国版)の画面イメージ【課題】最大の苦労は商圏データの入手
三井不動産グループは、国内で複合型ショッピングセンター「ららぽーと」や「三井アウトレットパーク」などの大規模商業施設を開発しており、中国でも同様の商業施設の開発に向けた不動産投資に力を入れている。ポイントとなるのは、いかに効率よく投資対象の不動産を見つけ出すかだ。「MarketAnalyzer」を採用し、商業施設開発を担当する上海法人の三井不動産(上海)投資諮詢の菊地渉・事業企画部副総監は、「投資対象の初歩的なアタリをつけるのに、なくてはならないツール」と高く評価。「MarketAnalyzer」によって、めぼしい案件の商圏を分析し、その後、確度を高めてから現地に足を運んでより突っ込んだ分析を行うという段取りだ。
「MarketAnalyzer」は分析エンジンと商圏データの大きく二つの部分で構成されている。高性能で汎用性が高い分析エンジンであることも強みだが、「どれだけ密度の高い商圏データを揃えられるかが真価を問われるところ」と、技研商事インターナショナルの井上哲仁・海外事業部中国区総監は説明する。日本の技研商事インターナショナルだけでは、商圏データの収集に限界があるので、中国のビジネスパートナーである上海優事商務諮詢がメインになって中国国内のデータ収集を行う体制を構築している。
上海優事の徐超淀総経理は、「商圏データの収集に最も苦労した」と語る。中国で人口や年齢構成、所得水準など基礎的な商圏情報を入手するのはかなり難しい。徐総経理は脱サラして、自らの会社である上海優事を立ち上げた後、およそ3年の歳月を費やして「MarketAnalyzer」を中国語化するとともに、中国の公的機関からその商圏の住民情報を入手するルートを開拓した。

写真左から技研商事インターナショナルの井上哲仁総監、三井不動産(上海)投資諮詢の菊地渉副総監、上海優事商務諮詢の徐超淀総経理【決断と成果】初歩的な分析をすばやく簡単に
最初のうちは徐総経理が自力で人口や年齢構成などのデータ入力を試みたが、中国は広くてとても無理ということがわかった。そこでデータをもつ役所に駆け込んで、「効率的な商圏分析は小売業の出店計画に欠かせないし、ひいては中国の商業発展に役立つ」と懸命に説得した。個人情報保護などの厳しい条件つきだったが、カバー範囲の広い公的なデータを商圏分析に役立てるところまでこぎ着けた。徐総経理の努力が実らなければ、「MarketAnalyzer」の中国での展開は難しかったといっても過言ではない。
ユーザーである三井不動産上海法人の菊地副総監は、「初歩的な調査であっても、外部の調査会社に依頼すると2週間もかかることが珍しくない」。だが、「MarketAnalyzer」を使えば、いつでも、好きなときに、好きな条件で商圏分析を行うことができる。不動産開発は、多くの候補のなかから絞り込んでいくわけで、候補が多ければ多いほど理想の物件に巡り会う確率は高まる。「初歩調査に2週間も費やしていては、候補とすべき場所も増えない」(菊地副総監)と、時間の節約に大いに役立っているという。
当然ながら「MarketAnalyzer」ですべてを把握できるわけではない。中国の国民は都市部への転居に制約がかけられていて、上海を例に挙げれば戸籍上の人口は1400万人ほどだが、実際におよそ2400万人が常駐しているといわれる。まずは「MarketAnalyzer」でアタリをつけ、その後は実地調査に踏み出すことで、効率よく投資候補の分析を進めるプロセスを確立したのだ。(安藤章司)
※登場人物の肩書きは3月末取材時点のもの。
3つのpoint
高密度な商圏データを獲得
地場のビジネスパートナーとタッグを組む
ツール活用で開発案件の調査を迅速化