「エキサイト」をはじめとする多彩なポータルサービスや、コンテンツ配信、ブロードバンド接続サービスなどを手がけるエキサイト（今川聖社長）。最近は、スマートフォン向けアプリのダウンロードサービスが大きな伸びをみせている。これらを支える安定したネットワークインフラの構築にも積極的に取り組んでいる。ロードバランサの更新にあたっては、A10ネットワークスの最新機種「AX3200-12」を採用して、パフォーマンスとセキュリティの両面で機能向上を図った。

【課題と決断】快適なアクセス環境整備は「義務」

　エキサイトは、インターネット情報サービスのユーザーに快適なインターフェースを提供するために、ネットワークインフラの安定性確保に力を入れてきた。その一環として、2011年末ごろから、ロードバランサ（負荷分散装置）の更新も検討し始めた。

　次期ロードバランサの選定にあたってエキサイトが重点課題として設定したのは、「IPv4アドレス枯渇問題に伴うIPv6クライアントへの対応」「DDoS攻撃に対するセキュリティ」「突発的なトラフィック増への対応」の三点だ。同社の知久壮・インフラストラクチャー室室長は「ポータルサービスを主軸とする当社にとって、あらゆるユーザーがいつでもスムーズにアクセスできる環境を整えることは最低限の義務。これまでも安定性を重視したシステム構築・運用をしてきたが、さらに盤石なサービス基盤を確立したかった」と構想を語る。

　大手企業数社の製品のなかから、最終的にはA10ネットワークスAXシリーズのセキュリティ機能強化モデルである「AX3200-12」を採用した。三つの課題をすべてクリアしたうえで、導入・運用コストを相対的に低減できるというコストパフォーマンスの高さが決め手になったという。選定のプロセスについてインフラストラクチャー室の中谷大輔氏は「安定性が最も重要なので、国内外での実績を重視した。また、各社のラボで実機に触ってみて、慎重に検討を重ねた。『AX3200-12』は、省スペース・省電力にもかかわらずパフォーマンスが高く、中長期的なトラフィック増もカバーできる点を評価した」と振り返る。

【効果】GUIがスムーズな移行を後押し

　AXシリーズは、A10ネットワークス独自のOSである「ACOS」と64ビット対応の専用ハードウェアによって、1Uのコンパクトなきょう体で110万L4CPS（L4での毎秒あたりのコネクション数）というハイパフォーマンスを実現している。さらに、「AX3200-12」は、DDoS攻撃防御に特化したセキュリティチップ「FTA（Flexible Traffic ASIC）」を搭載している。CPUではなくFTAでDDoS攻撃を防御するので、より高速での処理が可能だ。知久室長は、「効果を本格的に実感するのはこれから」と前置きしつつも、「『AX3200-12』の採用によって、安心感が格段に高まった」と話す。

　昨年6月から部分的に導入し、今年度中にはすべての更新を終える予定。移行作業はスムーズに進んでいる。これには、「AX3200-12」が操作性にすぐれたグラフィカルユーザーインターフェース（GUI）と業界標準のコマンドラインインターフェース（CLI）を備えていることも大きく貢献しているという。知久室長は「ベテランの技術者はCLIに慣れているし、GUIも非常によくできているので、過去のネットワーク知識がない若手でも操作しやすい。業務をシェアしやすくなり、システムの運用が非常にやりやすくなった。これまでトラブルはまったくない」と、手放しで評価している。

　現時点では、スペックに余裕のあるネットワークインフラが完成しつつある。ただし、「トラフィックは年々増えている」（中谷氏）こともあって、将来的には、OSのアップグレードやハードウェアの強化も視野に入れる。

　エキサイトにAXシリーズを提案したA10ネットワークス営業本部戦略アカウント営業部の永井晋作・SPセールスグループアカウントエグゼクティブも「メーカーの日本法人としてサポート拠点を整備しており、ユーザーの意見を常に収集・検討し、直接対応できる体制になっているのが当社の強み」として、今後のサポートに万全を期す構えだ。エキサイトは、A10ネットワークスと密接に連携して、継続的にネットワークの安定性確保に取り組む。（本多和幸）