2012年7月、エネルギー管理ソリューションを展開するシュナイダーエレクトリック(シュナイダー)に入社し、販売パートナー向けの営業を担当する市毛亜矢子さん。シュナイダーのあらゆるツールを複合的にパートナーに提案し、社会インフラとして提供することを目指している。前職で培ってきた客先の課題を読み取る提案の経験を生かし、パートナー販売の拡大に取り組んでいる。(構成/ゼンフ ミシャ 写真/大星直輝)
仮説を立てて提案を進める
営業の仕事にやり甲斐を感じ、ライフとワークのバランスを重視しながら、ずっと働き続けたい。
前号でそう述べた。今回は、そういう自分を形成した20代の経験を語り、新しい環境であるシュナイダーで今後どういう活動をしていきたいかについてお話ししたい。
私は、シュナイダーに入社しておよそ半年。まだ完全に慣れていないことも多々あるけれども、前職のシステムインテグレータ(SIer)で培ってきた「お客様の課題に気づく」という経験を生かして、販社にもっと当社の製品を売ってもらいたいと考えている。お客様の課題に気づくことは、簡単なことのように聞こえるかもしれない。しかし、長い時間と多くの苦労をかけて身につけた独自のスキルだと思っている。
「気づく」ことが大切であることを意識するきっかけとなったのは、前職のSIerで担当させてもらった初の大型案件だった。重要なお客様に対して、情報システムのフルアウトソーシングを提案するもの。私は当時、営業の経験と自信はあったが、ITの詳細な知識に乏しい。さらに、大手顧客に向けた提案の仕方もよくわからなかったのが正直なところだ。
最初のプレゼンテーションはその年の11月に行い、その後、何回もお客様のところに足を運んだ。提案がそこそこうまくいっていると思った。ところが、ある日、先輩に「お前、本当にお客様の言っていることを理解しているのか」と叱られた。その先輩いわく、私は先方の課題が正確に読み取れておらず、ニーズに十分に対応できていない。そもそも、お客様は何のためにシステムをアウトソーシングするのか。営業はそれに応じて、コスト削減につながることを訴えるべきか、それとも運用の負荷を減らすことができることを訴求すべきか。──こういうふうに厳しく指摘を受けながら、思い通りにいかずに何度も落ち込みつつ、提案を進めた。
先輩からアドバイスされて初めて、お客様の立場を強く意識し、自分のなかで受注に至るストーリーを仮説的につくってみた。その過程で、先方はこう言っているから、こちらからこう提案すべきというパターンを自分のなかで形づくった。最終の提案を出したのは、翌年の3月。「うちの課題解決にぴったりだ」と評価され、およそ半年のつらい期間を経て、注文をいただいた。受注を喜んだのはもちろんだけれど、先輩からもう厳しく言われなくてすむというのがうれしくてうれしくて……(笑)。
この経験は、自分の営業スタイルに大きな自信を与えてくれた。新しい職場のシュナイダーでも、販売パートナーは何を求めているかを常に考え、仮説を立ててそれに沿って提案を行っていく。当社は現在、ハードやソフトなど、数多くのエネルギー管理ツールを提供している。これらの製品を複合的にパートナーに提案し、ITインフラとしてではなく、環境にやさしい社会インフラとして普及させていきたい。
●日常使う営業ツール.......... フランスの高級ブランド、カルティエのボールペン。前職のSIerで、すぐれた営業実績が評価され、上司からプレゼントされたそうだ。商談の際のメモ書きに使い、上品で優雅な印象を相手に与えることを心がけている。
●上司からのひと言.......... 「市毛さんは業界知識が豊富で、スピーディでアグレッシブな営業スタイルを身につけているので、入社後すぐに大手パートナーを担当してもらった。また、コミュニケーション能力にも長けている。だから、短期間で部内外の社員との良好な関係を構築し、多くの社員と協力して仕事を進めている。市毛さんには、現状に甘んじることなく常に上を目指して、当社を代表する営業に育ってもらうことを期待している」(パートナー営業部の宮口英治部長)