その他
小規模法人市場に攻勢かけるTKC 競合の「危険性」を訴える手法に成算はあるか
2012/12/20 21:03
週刊BCN 2012年12月17日vol.1461掲載
TKCが小規模法人市場で攻勢を強めている。今年4月、年商1億円未満従業員10人以下の小規模法人向け財務会計システム「e21まいスター」を発売した。会計事務所経由で提供し、6か月間で利用企業が7000社を超えた。そのうちの95%を、手書き処理からの切り替えや他社製品からの乗り換えが占める。
この市場で、TKCが強く意識しているのが弥生だ。弥生によると、「弥生12 シリーズ」は、家電量販店やECサイトなどを合わせた市場の本数シェアが53.3%に達し、金額ベースでは69.4%を占めるに至った(GfKとBCNのデータをもとに弥生が集計)。クラウドサービスの「やよいの店舗経営 オンライン」は、11月時点で100ライセンス超の実績をもつ。これに対してTKCの角一幸社長は、「『e21まいスター』のユーザーの半数近くは弥生からのリプレースだ。弥生はパソコン会計ソフトでシェアが最も高いので、そこを食っていく」と、真正面からぶつかっていく姿勢をみせる。
角社長は、製品の違いで大きなポイントとなるのは「訂正・削除履歴の確保」だとして、弥生をはじめとする競合他社の製品について、「非常に危険だ」と強調する。「多くの市販の会計ソフトは、会計帳簿や決算書を作成する際に、期首に遡って何の痕跡も残さずにデータを修正できてしまう。だから信頼できない」という。決算書の信頼性が低い企業は、金融機関に融資してもらうことが難しくなる、と警鐘を鳴らす。TKCの場合は、巡回監査が完了した後、すべてのデータが修正できなくなるし、もし誤りがあれば、履歴を残して修正する。
弥生の岡本浩一郎社長は、「もちろん脱税は防止すべきだが」としつつ、「そういう発想をしている限り、当社と同じ顧客に訴求していくのは難しい。一定規模以上の企業で会計事務所と顧問契約をしていればよいが、個人事業主の場合は顧問契約を結んでいないケースがほとんど。費用面などで依頼することは難しい。毎日記帳することを勧めているが、書類をため込んでしまうことが多いのが実態だ。そうした状況を踏まえず、遡り処理をするのはダメというのでは、まったく実状にそぐわない」と訴える。
岡本社長は、「敵対するつもりはない。仲よくしたいくらいだが、TKCがそういう考え方なので、取り合ってもらえない」とこぼす。TKCの強気な姿勢は、市場を巡る競争がさらに激化することを予感させる。井上会計の松本惇・代表社員は、「弥生はすでに個人事業主だけでなく、小規模法人でもかなり利用されている。削除・変更履歴を残しておくという仕様は、小規模法人を対象とする製品の場合には必要だと思う。ただ、そこをわざわざ突かなければならないほど、TKCも弥生を意識せざるを得ない状況にあるといえるのでは」と指摘している。(信澤健太)
TKCが小規模法人市場で攻勢を強めている。今年4月、年商1億円未満従業員10人以下の小規模法人向け財務会計システム「e21まいスター」を発売した。会計事務所経由で提供し、6か月間で利用企業が7000社を超えた。そのうちの95%を、手書き処理からの切り替えや他社製品からの乗り換えが占める。
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