ICT構築事業を手がける三井情報で、データセンター(DC)サービスの営業を担当している永尾旭さん。OA機器の飛び込み営業を出発点として、およそ12年間にわたって、IT業界で営業畑を歩いてきた。2008年に入社した三井情報では、「足で稼ぐ営業マン」と評価されている。新人時代の厳しい経験で鍛えられ、「失敗しても、次に生かす」ことを身につけたという。(構成/ゼンフ ミシャ 写真/大星直輝)
[語る人]
●profile..........永尾 旭(ながお あきら)
大学卒業後、2000年4月、OA機器や通信機器の販売や保守を手がける会社に入社。SOHO向けのコピー機/ビジネスフォン営業を担当。2002年2月、ソフトウェア受託開発事業者に転職。企業向けネットワーク構築ソリューションの営業に携わる。その後、ネットワークインテグレータ(NIer)で中央省庁向けのソリューション営業を経て、2008年2月に三井情報に入社。データセンター販売事業に従事している。
●会社概要.......... システム構築やネットワーク構築をビジネスとするインテグレータ。1991年に設立。2012年3月期の連結売上高は、515億4800万円。従業員数は1918人。
●所属..........サービス事業本部
DCサービス営業部
DCサービス営業二室
●営業実績.......... 大手企業の会社合併に伴い、インフラからサーバーやクライアント端末までを含めた大型案件を受注したことが認められて、2009年、社長賞(奨励賞)を受賞。
●仕事.......... 三井情報が2010年に都内に開設した「東京西データセンター」をベースとして、データセンター(DC)サービスの営業を担当している。インフラシステム構築やサーバー構築、ネットワーク構築、ヘルプデスクなど、DCサービスの利用を統合的に提案する。新規顧客の開拓に力を入れている。
飛び込み営業に鍛えられて
高校生の頃はラグビー部、就職した会社の新人時代はOA機器の飛び込み営業だった。体力も精神力も、相当に鍛えられてきたと自負している。怖いことは何もない。商談に失敗しても、お客様のシステムに急なトラブルが発生してお叱りを受けても、その経験は必ず次の仕事に生かすことができるはず。私はそう信じている。怖がらず、前向きに動けば、お客様にも安心を与えることができる。そんなふうに、不安を払拭する営業スタイルを心がけて、日々の仕事に励んでいる。
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新人時代は、今考えてもしんどかった。新卒で入ったOA機器の販売会社は、体育会系の男性ばかり。社内の雰囲気はラフだが、自分に合っているような合っていないような、ひと言でいえば厳しい環境だった。私が担当したのは、首都圏のSOHOや零細企業を回って、コピー機やビジネスフォンを販売する飛び込み営業。新人がよくやらされる仕事だ。
朝、出社したら、電話帳をめくって、その日の訪問リストを作成する。事務所を出発したら、雑居ビルの上階から一階まで軒並み訪問しながら製品を売り込む。その会社にいたのは2年間ほど。その間に訪問した企業の数は、何百社にもなったと思う。しかし、私が扱うOA機器にニーズがなかったのか、営業トークの工夫が足りなかったのか、ほとんど実績を上げることができなかった。
いくら動いても成果を出せない──。精神的にも大きなプレッシャーを受けた。夜、同期生で集まって、飲みながら仕事を忘れるしかないという感じだった。
実績を上げないまま会社にしがみついているわけにはいかない。2002年にOA機器の販売会社を退職し、ソリューション営業の道を選んだ。そのきっかけになったのは、以前の販売会社で珍しく受注することができた無線LANの案件だった。その案件を通じて、人と人をつなぐネットワークに深い興味を覚えて、ネットワーク構築を手がける会社への転職を決めた。
新しい会社では、労働環境はだいぶよくなった。しかし、私は、ソリューション営業の経験がまったくない。当然ながら、最初は提案活動がうまくいかなかった。当時、あるお客様に厳しい言葉をいただいたことを、今でも鮮明に覚えている。
「君は、対応が雑だ。自分の会社のシステムエンジニアに頼り切っている。心から信頼することはできない」。
心にずんと響いた。ターニングポイントになったといってもいい。この経験は、お客様と信頼関係を築くことを重視するきっかけになり、今の営業の原点になっている。