富士ゼロックス(山本忠人社長)は、セールスフォース・ドットコムのクラウドサービス「Sales Cloud」をベースにした営業支援システム「ForCus」を構築し、本格運用を開始した。本社や各地域の営業担当者の活動情報を一元的に管理し、営業力の向上やサービス強化に役立てる。
富士ゼロックス
会社概要:1962年、富士写真フイルム(現・富士フイルム)と英国ランク・ゼロックス社との合弁で複写機メーカーとして発足。90年、ランク・ゼロックス社からアジア太平洋地域4か国の経営権と所有権を取得した。
サービス提供会社:セールスフォース・ドットコム
プロダクト名:「Sales Cloud」
「ForCus」関連のシステム概要
2008年のリーマン・ショック後、景気低迷や一時的な売り上げ減に襲われた富士ゼロックスは、「営業のあるべき姿について検討を重ねていた」(宮下淳・変革マネジメント部グループ長)という。従来、富士ゼロックスと全国34を数える販売会社は独自の営業支援システムを導入・運用し、メールや電話で情報を共有していた。全国各地域や事業部ごとにバラバラに存在する情報の一元化を目指して、次期システムの検討に着手した。2010年にセールスフォース・ドットコムのクラウドサービス「Sales Cloud」の採用を決定し、同年、活動管理に関わる機能に限定してトライアル運用を開始。翌年、商談管理に利用範囲を拡大して、本格運用に向けて準備を進めた。
富士ゼロックスでは、「Sales Cloud」をベースにした営業支援システムを、「For Customer(顧客のために)」にちなんで「ForCus」と名づけた。「ForCus」は、今年4月から、富士ゼロックス本社と販売会社の営業、スタッフ、SEなど約8000人に順次導入。7月、地域統轄会社の営業開始にあわせて本格運用を開始した。北日本、関東、首都圏、中部、西日本、九州の6地域に置いている100%出資の地域統轄会社は、県別販売会社を支援するのがミッションだ。販売機能をもたず、地域特性に合わせた市場の分析をはじめ、戦略の策定と展開、システムエンジニア(SE)とカスタマエンジニア(CE)の管理、各販売会社の経営管理や業務支援などを手がけている。
「Sales Cloud」を選んだ理由は、クラウドサービスならではの使い勝手や柔軟性にある。雨宮健敏・営業計画部営業企画室システム設計グループグループ長は、「画面の項目を追加しやすく、レポートやダッシュボードで容易に集計データを一覧できる。柔軟に開発できるのがメリットだ。アプリケーション機能が自動的に追加されるのもよかった」と説明する。
「ForCus」は、日々の商談や活動の管理、顧客情報の一元管理に活用している。基幹業務システムや顧客の声(Voice of Customer)などのデータベースと連係している。具体的には、最新の活動状況や営業情報を「ForCus」上で共有しているほか、担当営業やSEなどの連携の強化などに生かしている。例えば、取引先企業の特定の社員が地方へ転勤になった際に、これまでの営業情報を転勤先の地域にある販売会社と共有することが容易になった。富士ゼロックスの宮下グループ長は、「『ForCus』上でCEが対応した修理・メンテナンス情報を営業担当者が確認できるようになった」と語る。現場のマネージャークラスからは、部下の行動とその目的をきめ細かく管理できるようになったという声が寄せられているという。
企業内SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の「Chatter」機能の活用法は手探りなのが実情だが、「従業員に使うことを強制しているわけではない。自然に広がっていけばよい」(宮下グループ長)というスタンスをとっている。雨宮グループ長は、「一部の従業員が『Chatter』を使い込んでいて、そこに他の従業員が集まってくる傾向がある」と話す。競合ベンダーの動向や他社に関する報道記事を共有することなどに活用しているという。
2013年までに、1万ユーザーへの利用拡大を目指す。将来的には、アジア市場を中心とするグローバル展開やスマートデバイスでの利用を視野に入れている。(信澤健太)
富士ゼロックスの雨宮健敏グループ長(左)と宮下淳グループ長3つのpoint
・業務プロセスを見える化
・地域・部門横断の情報共有
・使い勝手や開発の柔軟性