ピー・シー・エー(PCA、水谷学社長)が開発する中小企業向け基幹業務クラウドサービス「PCA for SaaS」の販売が好調だ。導入企業は、3月時点で1000社を超えた。パッケージとクラウドサービスの販売強化にあたって、API(アプリケーションプログラミングインターフェース)の「クラウドAPI」を公開し、また社内体制の整備を通じて、SIer(システムインテグレータ)との協業深耕を狙う。
「PCA for SaaS」は、財務会計をはじめ、給与計算、販売管理、仕入れ・在庫管理などの基幹業務に対応するクラウドサービスだ。月額利用料だけで利用できる「イニシャル“0”プラン」と、数か月単位の利用期間を選択できる「プリペイドプラン」が企業の支持を受けて、利用実績を伸ばした。「プリペイドプラン」は、2011年に3年間と5年間のプランを追加し、「パートナー企業からの受けがよい」(折登泰樹専務)という。
パッケージと比べて、公益法人や社会福祉法人からの引き合いが多いのが特徴。折登専務は、「月額の支払いのほうが予算化しやすいからだ」と説明する。
今年度(2013年3月期)に入り、複数の施策を打つ意向を示している。すでに、4月1日付でTSC(テクニカル・サポート・センター)をDSS(Dream21 System Solution)事業部の前身組織から分離独立させて、中小企業向け基幹業務アプリ「Xシリーズ」と中堅企業向け統合基幹業務システム(ERP)「Dream21」を一貫してサポートする体制を整備した。TSCの役割は大きく三つ。パートナー企業の技術支援、PCA製品との連携支援、パートナー企業の教育である。
従来は、DSS事業部傘下のサポート部隊(TSCの前身組織)が「Dream21」のシステムインテグレーション(SI)を含むサポートを担い、一方で「Xシリーズ」のサポートは営業担当者が個別に対応するかたちを採っていた。サポートの範囲を拡大したことで、業務効率の向上にも役立てる。
こうした組織変更は、「クラウドAPI」の公開に向けた布石でもある。今後、「Dream21」のSIパートナーであるPSIP(PCA Systems Integration Partner)は、ゴールドパートナーとシルバーパートナーを新規に設ける。いずれも「Dream21」と「Xシリーズ」の販売を担う。なかでもシルバーパートナーは、「Xシリーズ」のカスタマイズを手がけてきたSIerなどを想定。パートナー企業が「クラウドAPI」を活用し、「Xシリーズ」のパッケージやクラウドサービスの連携ソリューションを提供するにあたって、充実した支援体制で臨む。
今年10月には「Xシリーズ」のクラウド版を投入し、クラウド事業を加速する意向だ。「今年度中に2000社を目指す」(折登専務)という。
オービックビジネスコンサルタントや応研などの競合ITベンダーがクラウド事業に慎重な姿勢をみせるなか、クラウドサービスを差異化要因として大きくアピールし、一気に市場カバレッジを拡大する構えだ。(信澤健太)