中国軟件与技術服務股份有限公司(中国軟件)は、1980年設立のSI・ソフト開発企業で、「中国初の老舗SIer」を自負している。中国の政府機関向けソフト開発に強く、中国の国内市場での売り上げがほとんどだが、90年代には海外にも進出した。日本には子会社を設置し、オフショア開発事業を営むが、海外事業を統括する徐潔 高級副総裁は「今後、日本法人が果たす役割はそれだけではない」と指摘する。老舗SIerが考えるグローバル戦略、そして日本企業との組み方を来日した徐氏に聞いた。(取材・文/木村剛士:本紙副編集長)
「日本のクラウドを中国で販売したい」
――中国軟件の特徴を教えてください。  |
海外事業を統括する 徐潔 高級副総裁 |
徐 北京本社と、沿岸と内陸部の主要都市に拠点を構え、SIとソフト開発、自社・他社製ソフトの販売事業を手がけています。政府機関向け事業に強く、売り上げ全体の60%程度を占めます。事業区分でみれば、ソフト開発が主で全体の60%。海外展開は、米国と日本に子会社を設置して主にオフショア開発事業を手がけており、海外の売上高比率は10%ほどです。
――海外事業の状況は?
徐 事業セグメントは、大別すると「アウトソーシング」「オフショア開発」「製品販売」の三つです。海外事業全体のうち60%をオフショア開発事業が占めます。日本では、2003年に現地法人「中軟東京」を設立し、オフショア開発とアウトソーシングサービスの案件獲得を進めています。日本の売上高は3億円程度ですが、今年度は30%ほど伸ばすつもりです。
――中国軟件が進める2012年の事業戦略でのポイントは何ですか。
徐 ソフト開発事業のボリュームを維持しながらも、ITサービス事業をもっと伸ばす計画を立てています。具体的にいえば、情報システムの企画立案を支援するコンサルティングサービス、システムの運用を代行する運用サービス、そしてクラウドですね。とくにクラウドには力を注ぎます。
――クラウドではどのようなビジネスをお考えですか。
徐 パブリッククラウドサービスの提供、そしてプライベートクラウドの構築ビジネスをともに手がけていきます。クラウドは中国でも流行しており、需要がありますからね。クラウドを伸ばすためには、日本法人が非常に重要な役割を果たしているのです。
――日本法人が重要というのは?
徐 日本法人では、オフショア開発案件の獲得数を増やしながら、中国市場で販売できる魅力的な商品を探す役割を担わせています。日本で実績があったり、中国でニーズが大きくなりそうだったりする製品は、調達して中国で販売する考えです。そのなかで、今、とくにわれわれが力を入れているのが、クラウドで動かすサービスの調査です。よいクラウドが日本にあれば、ぜひ中国で販売したいと思っています。
今回の来日もそれが目的の一つです。大手のIT企業との商談を予定しています。契約形態はこれから詰めますが、何かしらのかたちで、中国で販売するクラウドを調達できればと思っています。
――どのようなソフト、サービスに興味を抱いていますか。
徐 詳しくは言えませんが、今の時点では、ユーザー企業の業種を問わずに受け入れられる汎用的な機能をもつものが適しているとみています。
――米国ではなく日本に着眼する理由は何ですか。
徐 品質が高く、新しい技術をキャッチアップするのが日本企業はすごく上手ですから。それと日本の文化、商慣習、仕事の進め方が中国の企業に合っていることも理由の一つです。
■企業プロフィール
中国軟件与技術服務股份有限公司
1980年に設立された中国のSI・ソフト開発企業。従業員数は約1万2000人で、年商は約35億元(約420億円)。上海市場(A株)に上場する。中国の政府機関と中国企業向けのSIほか、自社開発ソフトの販売、他のISV製ソフトの再販事業を手がける。他社製ソフトの販売では、マイクロソフトやオラクルなどで実績が多い。同社によれば「中国で最初のSIer」という。日本では、03年に子会社「中軟東京」を設立。主に日本企業から受注するオフショア開発事業を行う、また、中国市場への参入を望む日本企業に対して、進出支援のためのコンサルティングサービスも手がけている。