IT資産管理ソフト開発・販売などのクオリティソフト(久保統義社長)は、IT資産管理機能のクラウドサービス「ISM CloudOne」の販売を強化する。2011年の1年間で約7000社のユーザー企業・団体を上乗せし、年末時点で累計1万7047社のユーザーを獲得したが、今年はさらに攻勢をかけて、12年末時点で累計ユーザー数を3万社まで増やすことを目標としている。着々とユーザーを獲得しているツールの中身と販売戦略をみる。
 |
| 昨年12月に社長に就いた久保統義氏 |
「ISM CloudOne」は、パソコンやスマートフォン、タブレット端末の設定と管理業務を効率化し、セキュリティ対策も施すことができるクラウドである。端末のハードとソフト情報の収集や、端末内にあるデータの持ち出し制御、端末の設定を一括で行うことができる。
クオリティソフトは、類似製品・サービスをもつソフトメーカーよりも、クラウドを開始した時期が早かった。「ISM CloudOne」の初期版(当時のサービス名は「ISM」)は、2007年に販売を始めている。先行メリットを生かした部分があるが、間接販売網の構築を着実に進めていた点も販売面で有利に働いた。
直販は行わず、100%間接販売に徹して、再販業者となるSIerやITサービスベンダー(パートナー)には、サービス名や価格を自由に設定できるようにするなど、柔軟な考えでチャネル網を築いた。セキュリティソフト業界に豊富な人脈をもつ久保社長が、09年にクオリティグループに移籍したこともプラスに作用して、「ISM CloudOne」を販売するパートナーは約15社に増えた。
販売活動はパートナー任せにせず、独自の案件創出・管理システムとマーケティング活動で、月間2000件の見込み顧客情報を発掘する。内容を精査して成約に結びつきやすい案件を選りすぐり(全体の約2割)、そのうえでパートナーに紹介するという仕組みが奏功して、約1万7000社ものユーザーを獲得した。
12年末までの累計ユーザー獲得目標は、3万社。この1年で約1万3000社のユーザーを獲得するつもりだ。5年で1万7000社を獲得したことを考えれば、かなり挑戦的な目標だ。これまでメインで攻めていたパソコン保有台数30台程度の中小企業に加えて、そのクラスから500台未満の中堅クラスのユーザー企業・団体も攻めることで目標達成を目指す考えだ。海外の端末やスマートデバイスも管理できる対応力で、他社と差異化を図る。
SaaS系クラウドは、多くのフロントアプリケーションソフトベンダーがサービス化しているものの、成功しているケースは少ない。今年中に3万社もの「ISM CloudOne」のユーザーを獲得すれば、SaaSの成功事例をもつメーカーとして、クオリティソフトの存在感はいっそう高まるだろう。(木村剛士)