内田洋行(柏原孝社長)は、中堅・中小企業(SMB)市場で自社開発のERP(統合基幹業務システム)「スーパーカクテルシリーズ」の販売と製品開発で攻勢をかけている。今年6月以降、直系販社を再編・統合することなどを発表。これまでアプローチしてこなかった企業規模層を取り込む上位版(製品の名称は未定)の開発も明らかにした。生き残りをかけた“総力体制”の構築を進めている。
年商500億円未満のSMBをターゲットとするERP市場は、国内外ベンダーが入り乱れて競争が激化している。従業員300人から5000人未満の中堅企業向け販売業務分野ERP市場のベンダー別出荷金額シェアを調査するアイ・ティ・アールによると、年商100億円前後の食品業に強い内田洋行は、オービック、富士通マーケティングに次ぐ第3位のシェアをもち、一定の支持を得ている。しかし、出荷量ベースでは数値が伸びているものの、金額ベースでは横ばい傾向。内田洋行は、さらなる事業拡大に意欲を燃やしている。
直近の施策で注目に値するのが、直系販社の集約だ。2011年7月、業務アプリケーション開発・販売や運用支援サービスなどの事業を展開する情報エンジニアリング事業分野のグループ6社を東西2社に再編・統合し、新会社である内田洋行ITソリューションズと内田洋行ITソリューションズ西日本を設立した。小幡征範・情報事業本部企画部企画課課長は、「規模を追求しなければ、高い競争力は望めない」と説明。角野雅夫・情報事業本部企画部部長は、「地方よりも首都圏と近畿圏の中小マーケットを深耕することが再編の大きな目的だった」とコメントする。
地域別・業種別に展開していた人員・ノウハウを集約する体制のもと、生産性の向上やサポートの標準化に取り組み、コスト競争力の強化を目指している。ソリューションの提供については、内田洋行との連携を強めていく方針を掲げている。
“総力戦”に向けた販売体制の整備と並行して進めているのが、製品ラインアップの強化・拡充である。今年8月には、CRM(顧客管理)機能やセグメント管理機能を強化した「スーパーカクテルデュオ販売 V7.0」をリリースした。来年には、この上位版を投入する予定だ。角野部長は、「従来のマーケットだけで生き残るのは難しいと判断した。上位版は、年商100億~500億円の企業を対象に販売していくが、『スーパーカクテルシリーズ』にするかどうか、製品の名称は未定だ」と明かす。プライベートクラウド環境での提供を想定しており、大手ベンダーのデータセンター(DC)を利用する方針だという。
直系販社の再編・統合や製品ラインアップの強化といった施策の背景にあるのは、国内市場が置かれている状況に対する同社の強い危機感とみられる。(信澤健太)