DLPは、予防的な観点から情報漏えい(による損失)を抑止するソリューションを指す。日本国内には3年ほど前から投入されている。比較的新しい商材であり、本格的な販売は昨年からというベンダーも存在するように、まだまだ伸び代が期待できる製品だ。大企業を中心に、徐々に導入が進み始めている。ベンダーのソリューションや、自社のソリューションと組み合わせることによって、ビジネス機会を拡大することが期待できる。(文/鍋島蓉子)
figure 1 「市場動向」を読む
大手企業を中心に導入進む
およそ3年前に日本の市場に登場した「DLP(Data Loss Prevention)」は、まだまだ広がる可能性を秘めている。DLPは企業内にある重要情報を識別、検出して優先づけを行うなどして、その企業のポリシーに基づいて制御することで情報漏えい抑止を支援する製品のことだ。ポリシー違反を検出した場合に、社員一人ひとりに対して確認メッセージなどを送る機能をもっており、うっかりミスなどを矯正する教育的効果も期待されている。
DLPは三つの領域の保護を行う(右図)。(1)クライアントPCからの情報流出を防ぐ「エンドポイント」(2)電子メール、ウェブアクセス、FTPなどを監視する「ネットワーク」(3)企業内の重要情報を格納する「ストレージ、データベース、ファイルサーバー」などを包括的に保護する。国内市場では、金融、官公庁、製造業など機密データを多く取り扱う大手の企業・組織を中心に、セキュリティインシデントに喚起される格好で、導入を検討する企業が増えている。
DLPの保護領域
figure 2 「プレーヤー」を読む
メーカーが増加、もうすぐ開花
現段階で市場で先行しているのは、アンチウイルスソフトウェアを提供しているメーカーである。トレンドマイクロ、シマンテック、マカフィーが、それぞれ2008年にDLP製品を発表した。その後、チェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズや、ストレージメーカーであるEMCの傘下のRSAセキュリティ(現RSA事業部)が製品を発表したことによって、市場が盛り上がってきた。
DLPによる保護領域はメーカーによって異なる。シマンテック、RSAはエンドポイント、ネットワーク、ストレージを包括的に保護できる製品を提供。一方、トレンドマイクロ、マカフィーは現段階ではエンドポイントのDLP製品のみを提供しているが、今期中にはネットワーク製品を市場に投入する予定だ。チェック・ポイントはネットワークセキュリティ製品のメーカーとしてネットワークDLPの製品に力を入れている。
主なプレーヤーと製品
figure 3 「パートナー」を読む
コンサルティング力のある企業と組む
DLPを導入するうえで、重要なのは「ポリシーの定義」だ。これがきちんと設定されていなければ、DLPが機能せず、情報がダダ漏れするか、あるいは何でもかんでも止めてしまう結果を招く恐れがある。また、企業システムと連携するための作り込みも発生するので、アンチウイルスソフトウェアのような手離れのいい製品ではない。そのため、コンサルティング力をもつシステムやネットワークのインテグレータと組んで製品を販売することになる。マカフィーは企業のコンプライアンスを受託するコンサルティング会社をパートナーとして獲得することも視野に入れている。
また、RSAやシマンテック、トレンドマイクロは自社にコンサルティング部隊を抱えている。トレンドマイクロは、システムディや日立ソリューションズなどをパートナーとしている。トレンドマイクロが展開するパートナー支援プログラムにより、2011年4月時点で70社250人以上のDLP認定技術者が誕生している。シマンテックはパートナーの専門分野強化を支援する「スペシャリゼーション」プログラムを推進。「DLP Specialization」をもっているのは日本HPとエクサの2社。また、マカフィーではマクニカネットワークス、テクマトリックス、住商情報システム、チェックポイントでは新日鉄ソリューションズ、EMCジャパンではテクマトリックス、ネットマークスなどが製品を販売している。
各メーカーの主要パートナー
figure 4 「販売施策」を読む
「DLPはカンタン」を訴求も
DLPは、「難しい」という意識が根づいている製品でもある。その意識を払拭する方策として、チェック・ポイントは600種類のポリシーテンプレートを用意。スイッチの空いているポートに入れれば簡単に効果測定ができる「Try&Buy」を展開している。デモパックの提供やキャンペーンを実施して「DLPは簡単」を訴える。マカフィーやトレンドマイクロは、リムーバブルメディアを柔軟に制御するデバイスコントロール機能などからの段階的な導入を訴求する。また、マカフィーは、ポリシーのコンサルティングメニュー策定を視野に入れる。「統合セキュリティ」を推進していることから、自社の他のソリューションと組み合わせてDLPを付加価値として販売する。
トレンドマイクロは、パートナーとともに導入支援サービスを展開中。中堅・中小企業でも導入しやすい価格設定で実績を伸ばしている。EMCジャパンは、メールマガジンでの訴求やセミナーなどを実施することで市場認知を図るとともに、提案しやすい統合ログ管理製品と組み合わせて、予防と事後の包括的なセキュリティ対策を提案している。シマンテックは「ラージエンタープライズ」に的を絞り、業種を特化してラウンドテーブルを開催している。パートナーはDLPを付加価値として、自社のソリューションなどと組み合わせて受注金額の大きいビジネスを展開できるのが魅力的だ。
各社のDLP拡販施策