有力SIerのTDCソフトウェアエンジニアリング(TDCソフト、谷上俊二社長)は、中国でのモバイル活用型クラウドサービスの可能性を探っていく。中国でもAndroid OSを搭載したスマートデバイスが急速に普及しており、業務システムにスマートデバイスを活用する動きが本格化している。同社は天津市に開設したオフィスを足がかりに、中国市場への独自ソリューションの売り込みに取り組む。
TDCソフトの初めての海外拠点となる中国・天津駐在員事務所(天津オフィス)は、(1)モバイル活用型の独自クラウドサービスの立ち上げ(2)金融業向けSIサービス(3)日本向けオフショアソソフト開発の三つを事業の柱として掲げて、今年1月に開設した。とりわけ、AndroidやiPhoneなどスマートデバイスの普及が目覚ましいことを受け、モバイルを切り口としたクラウド型サービスビジネスについて「中国市場での可能性を積極的に探っていく」(天津オフィスの鈴木一正首席代表)構えだ。
同社は、業界に先駆けてモバイルクラウドに取り組んできた。報告書作成・閲覧の「HANDyTRUSt(ハンディトラスト)」や、Salesforceと連携させる「MoobizSync(ムービズシンク)」、HANDyTRUStと連携するクラウドサービス「Trustpro(トラストプロ)」など、モバイルとクラウドを活用した独自商材を開発。昨年度上期(2010年4~9月期)のモバイルクラウド関連の売上高は、前年同期比で62.2%増と大幅に伸びた。
新たな商材開発も着々と進む。モバイルクラウドを実現する基盤で、TDCソフトが独自に開発した「モバイルベーステクノロジー」は、今年夏をめどにAndroid OS搭載デバイスに対応する予定だ。iPhoneにはすでに一部対応を開始しているが、Android OSにも対応することでサービス対象が一気に広がる。これまでの独自仕様の携帯電話では、規格やOSの差異が大きく、グローバル展開は難しかった。だが、iPhoneやAndroidなど、標準的なOSの世界的な普及で「サービス展開の地盤が整いつつある」(天津オフィスの江口隆広所長)と、海外進出への期待を膨らませる。
また、天津市は金融業の振興に熱心な地区である。今回の中国オフィスの選定は、「当社が強みとする金融業向けSIでビジネスチャンスが見込め、なおかつ北京市にも近い」(鈴木清美代表)ことが決め手となった。モバイルクラウドと金融業向けSI、日本向けオフショア開発を三本柱として、天津オフィスでは向こう3年で年間5億円の売り上げを視野に入れる。(安藤章司)

写真左から天津オフィスの江口隆広所長、鈴木一正首席代表、鈴木清美代表