日本IBM(橋本孝之社長)は、バックアップ・ソフトウェア製品「IBM Fast Back Center(IBM FastBack)」を国内中堅企業市場に拡大するために、同社の付加価値ディストリビュータ(VAD)経由で2次店に波及を目指す実質半額キャンペーンを実施中だ。「IBM FastBack」は、世界のバックアップ市場ではシマンテックに次ぐシェア2位に位置している。だが、国内では10%弱と競合他社の後塵を拝していることもあって、ここで一気に市場獲得を狙う。ディスク・バックアップに特化した同製品が、どこまで上位に食い込めるかが注目される。(取材・文/谷畑良胤)
ディスク特化の製品で追撃
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西倉誠 マーケティングマネージャー |
万が一のシステム障害に備えるデータのバックアップやリカバリーは、事業継続を確保するうえで重要なテーマに浮上しており、プラス成長を続ける市場だ。大容量化するデータのバックアップには、多大な時間を要する。サーバーが複数であれば、その作業労力はさらに増す。「IBM FastBack」は、「こうした悩みを解消するにあたって、簡単に効率的なデータ保護・回復を支援するバックアップソフトだ」と西倉誠・SWブランドマーケティングマネージャーが説明するように、導入やセットアップ、操作が簡単さを売りにした製品である。
具体的には、「スナップショット方式」によりデータ・ブロック単位での増分バックアップを行うので、データベースのバックアップでも大幅に時間短縮することができるほか、「インスタントリストア」機能でリストア(データ復旧)開始からわずか数分でビジネスを再開することができる。
また、「IBM FastBack」は「Windows Server 2003」以降に提供されているVSS(Volume Shadow Copy Service)をサポートしており、「Microsoft SQL Server」のバックアップはわずか数秒の停止で業務再開が可能だ。テープを使ったバックアップでは、復旧に時間を要することが悩みだったが、ディスクに特化した「IBM FastBack」ならば、システムと業務の停止時間を最小化できるわけだ。
だが同社によれば、「競合他社製品に比べて競争優位のある製品だが、国内のバックアップソフト市場では、世界に比べてシェアを獲得できていない。仮想OSがいくら増えても価格が変わらないライセンス体系にもかかわらず、他社製品に比べて相対的に価格が高かったことなどが要因だ」(西倉マネージャー)とみる。そこで、国内で高いシェアを誇るシマンテックの製品群「Backup Exec」やCAの「ARCserve」などに対抗するため、定価の半額以下の価格を打ち出し、VAD経由で2次店へ同製品を波及させる「IBM FastBack Centerキャンペーン・オファリング」を開始したのだ。
IAサーバー販社のドアノック商材
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FastBackの キャラクター「Rica」 |
キャンペーン・オファリングでの提供価格は、バックアップ・リストアの基本製品「IBM FastBack」、オプション製品であるシステム領域のリストア(BMR)機能「IBM FastBack for BMR」とExchangeのきめ細かいリカバリー機能を提供する「IBM FastBack for MS Exchange」の3製品がバンドルされ、初年度保守料金込みで「IBM FastBack Center」(定価47万円)の半額以下となっている。競合製品の場合、基本製品、システムバックアップ、1年間保守が付いて30万円弱。西倉マネージャーは「価格は実質半値だが、販売数に対してパートナーが受け取るインセンティブは定価ベースなので、取り分が減ることがない」と、儲けを度外視してでも、パートナーに利益を与え、市場シェアを獲得していく戦略という。
2次店は今回のオファリングを、イグアス、キヤノンITソリューションズ、ソフトバンクBB、ダイワボウ情報システム、日本情報通信、ネットワールド、シネックスインフォテックのVAD7社から購入することができる。このキャンペーン・オファリングと並行して日本IBMでは、営業と技術者向けに「FastBack個別オンサイト・セミナー」を実施したり、セールスキットとなる体験版の無償配布、各種トレーニングなどを2次店向けに実施している。「『IBM FastBack』は認定資格が無くても販売できるオープン・ディストリビューション製品なので、どのパートナーでも販売できる」(西倉マネージャー)としており、幅広い層のパートナーから販売される機会を増やしていく方針だ。
現在までに、「IBM FastBack」を販売した経験のあるパートナーは、38都道府県の119社にのぼっている。西倉マネージャーは「IAサーバーを販売するパートナーにとっては“ドアノック”となる商材であり、さらなる拡大を狙うことができる」と自信をみせる。国内では、「Rica」というFastBack用のキャラクターを立て、独自のマーケティング施策を展開することで、「シェア拡大を目指す」(同)方針だ。