3月11日14時46分に東日本の広域を襲った東北地方太平洋沖地震。

　東京発──。BCNのオフィスがある千代田区神田では、JRが電車を止め、けたたましいアラートを鳴動させていた。東京メトロ銀座線の神田駅でも、電車に乗ろうとして改札口に来た客を、駅員が地上に退避させた。

　地上を改めて見回すと、道路の真ん中で、建物から出てきた人たちが立ち尽くしていた。家族の安否を確認しようとしても、携帯電話、固定電話ともすでに回線がつながらなかった。

　揺れていた時間は2分ほど。普通なら短い時間だが、長く長く感じた。インターネットはいつもと変わらずアクセスできて、電気、ガス、水道といったライフラインも確保されていた。だが、交通インフラは麻痺し、大勢の帰宅難民を出した。コンビニエンスストアからは、パンやオニギリ、カップラーメンの姿が消えた。

　東北の太平洋側発──。福島第一原子力発電所では放射能漏れが起き、一定区域に住民退避の被害が発生している。地震による副次的なインシデントが被災地を襲い、関東一円では電力供給不足による計画停電が実施されている。水、乾電池、食糧の買い占めによって、スーパーなどでは品薄状態が続き、ガソリンスタンドはタンクローリーでの輸送が減り、品切れ状態が続いている。

　東北の、比較的被害の少なかった地域では、地域のITベンダーが顧客先のシステム復旧に当たっている。

　福島県郡山市のあるITベンダーでは、地震直後に切れていたインターネット回線を復旧後、会社の車両にガソリンを入れた。従業員のマイカーは何かが起きた時のために家に置いておき、市内に住む従業員は会社の車両で出勤する。メーリングリストで出勤できない社員と連絡を取り合い、遠方の社員はVPNで社内システムに接続して遠隔から仕事をしている。「相馬市では顧客先の事務所が津波で流されてしまったために、まだ業務再開とはいかないが、従業員の方々は無事だった」と安堵する。

　看護業務支援システムを開発・販売する青森県弘前市のITベンダーは、病院を中心とする県内外の顧客システムの復旧に当たっている。「岩手県の県立病院のすべては当社製品のユーザーだが、まだ状況が掴めず。岩手県医療局からも連絡が入っていない。だが、復旧が進むにつれて間違いなく対応作業が入ってくるだろう」と、出番を確信している。

　多くのIT企業が義援金寄付の方針を打ち出し、なかには、地元ITベンチャーを他県で受け入れる準備を整えた団体もある。

　支援の輪は大きく広がっている。（鍋島蓉子）