大手ネットワークインテグレータのネットワンシステムズ(吉野孝行社長)は、基幹業務系システムや情報系システムなど、数多くのシステム群を自社内のプライベートクラウドへ移行することに取り組んでいる。その一環として、データセンター(DC)に置く物理サーバーの削減を目的に、2008年、統合ストレージ「EMC CLARiX CX4」などを活用したEMCジャパンのシステム仮想化ソリューションの導入を決めた。
ネットワンシステムズ
会社概要:1988年設立のネットワークインテグレータ(NIer)。東京品川区に本社を置く。ネットワークコンサルティングのほか、設計・管理や運用サービスなどを展開する。社員数は、単体で1366人、連結で1937人(2010年3月)。
サービス提供会社:EMCジャパン
サービス名:統合ストレージ「EMC CLARiX CX4」など
ネットワンシステムズのシステム構成
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| 第2システム部の土屋雅春部長。「自社内でノウハウを培ったうえで、ソリューションをお客様に提案していく」と語る |
ネットワンシステムズは数年前から、自社内システムのクラウド化を推進しており、およそ300台の物理サーバーを本社のオフィスからDCへ移設することを進めている。しかし、その過程でサーバーを収納するラックの数が増えるにつれ、DCでスペースを借りる費用が増大するという問題が浮かび上がってきた。コスト激増の対策として、サーバーを置く場所を減らすとともに、消費電力の削減を目指し、システムの仮想化に取り組む社内プロジェクトを立ち上げた。
プロジェクトは、仮想化ソリューションの導入を決断し、システム構造や製品選定を担当したプラットフォーム事業部と、システム導入の作業などを手がける第2システム部から構成され、メンバーは約20名。第2システム部の土屋雅春部長は、「プラットフォーム事業部がEMCジャパンのソリューションを選んだのは、当社がEMCの製品を長く取り扱っており、今回のソリューションをまず自社内に導入して使ってみて、設計や運用ノウハウを培ったうえで、今後はお客様にも提案していくという狙いがあった」と語る。ソリューションは、大規模システムまでをカバーできる拡張性をもつEMCジャパンの統合ストレージ「CLARiX CX4」を、他社メーカーの仮想化ミドルウェアや消費電力・発熱量の削減にすぐれたブレードサーバーと組み合わせたものだ。
プロジェクト内で「どこからシステム構築の取りかかるか」についての議論を経て、2009年に業務系システムを対象とした第1フェーズに着手。第1フェーズでは、導入作業の途中で製品の機能が不足し、ミドルウェアが動かないなどの問題が起きてカットオーバー(稼働開始)が3か月ほど延期になった。だが、第1フェーズで学んだことを生かすことによって、情報系システムを対象とした第2フェーズは3か月弱と短い期間で作業が終了した。土屋部長は、「プロセス全体をみれば、スムーズに運んだ」と振り返る。
仮想システムは2010年10月に全面本稼働にこぎ着けた。導入にあたって、ネットワンシステムズは自社がネットワークインテグレーションをビジネスとしており、プロの技術者が社内にいるので、ソリューション提供側のEMCジャパンの力をほとんど借りることがなかったという。
ネットワンシステムズにとって、社内システムの仮想化を決断したことによって得られたメリットは大きい。物理サーバーの台数が激減し、消費電力がほぼ半減となったというだけでなく、他のユーザー企業に向けた製品展開にあたって、導入プロセスで得た経験やノウハウを将来にわたって活用できることが大きなメリットだ。「途中でちょっとした問題が起きたからこそ、今後のビジネス展開に役立つ知識を身につけることができた」(土屋部長)と、教訓も得たようだ。(ゼンフ ミシャ)

(左から)仮想化プロジェクトに関わった第2システム部の喜田篤史氏、土屋雅春部長、川口和邦課長
3つのpoint
・電力費など運用コスト削減を実現
・サービス提供のリードタイムを短縮
・ハードウェア管理の負荷が軽減