埼玉県さいたま市に本社を置く建設会社、松永建設。創業1963年の老舗が2011年に入って新たに整備したITインフラは、モバイルだ。建設会社は、施工現場が各地に点在している。そのため、各施工現場にいる従業員の生産性を向上させるためには、モバイル環境の整備が必須となる。それが、今回新たにモバイルインフラの整備を決断した最大の理由だ。これまで本社に戻らなければできなかった業務を、各施工現場でもセキュアに実現できるようにした。
松永建設
会社概要:埼玉県さいたま市に本社を置く1963年創業の老舗建設会社。グループ企業には、不動産事業の松永都市開発や、介護福祉サービスのうらら岩槻などがある。グループ企業含めた従業員は約200人。
システム提供会社:国際産業技術など
サービス名:3Gネットワークを活用した閉域モバイルアクセス
松永建設が導入したモバイル環境
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| 松永建設の須釜洋年・購買部課長。購買業務を手がけながら情報システムも預かる。1人で約200人の従業員のPCや情報システムの面倒をみる |
建設会社の従業員は各施工現場に散らばっており、その場所で社内システムや、インターネットに接続できる環境が必要になる。「当社が手がける建設・土木業の規模は、施工期間が半年以内がほとんど。場合によっては1日で終わる現場もある」(須釜洋年・購買部課長)。インターネット環境や社内システムに素早くアクセスできる環境をつくり、すぐにその現場を退去できるような体制が必要なのだ。しかも、それを複数の施工現場で行わなければならない。
セキュリティを確保したうえでこの環境をつくるのは難易度が高い。しかし、「施工現場の従業員はメールを見たり、社内システムにあるデータを閲覧・編集するためには、現場から本社に戻る必要があった。社員の生産性を向上し、顧客満足度を高めるためには必須のシステムと考えた」(須釜氏)。
松永建設が重視したポイントは二つ。設計図など、重要なデータが格納されているので、高度なセキュリティを保持できること。そして、もう一つが各従業員が煩わしい接続設定をしなくてもいい仕組みであることだ。これらを考慮した結果、須釜氏は次のようなモバイルシステムの構築を決断した。
ウィルコムとNTTコミュニケーションズが協力して提供する「3G閉域接続サービス」と呼ばれるモバイル通信サービスを活用することで、まずは閉域での社内システムへのアクセスを実現した。そのうえで、社内システムからインターネットに接続できるようにすることで、インターネットにもセキュアな環境でアクセスできるようにした。

さいたま市岩槻区の松永建設本社ビル。埼玉県内の土木・建築に強い。不動産事業や介護福祉サービスなどを手がけるグループ企業を合計4社を抱えている。地元では名の知れた企業だ
各施工現場のスタッフは、ウィルコムの通信機器を差し込んだヤマハ製のルータに有線LANケーブルでパソコンをつなぐだけで、インターネットにも社内システムにもアクセスできる。ルータにすべての接続設定が行われているので、各従業員はルータとパソコンをLANケーブルでつなぐだけ。須釜氏は次のステップとして、本社に送られた現場スタッフ向けのファクスを各従業員に自動で振り分けてメールで配信する仕組みを考案中。「実現すれば、本社に帰らなくても現場で仕事が完結する」と期待している。
まずは試験的に5台を導入、初期費用は1台あたり5万円前後という。このシステムを導入するために、須釜氏はウィルコム、ウィルコムの販売代理店、NTTコミュニケーションズの販売代理店、実際の設定作業などを行った国際産業技術の4社のスタッフを招き、協議を重ねて知恵を出し合った。須釜氏は「導入した各製品・サービスは、とくに斬新なわけではない。ただ、無数にあるサービスを組み合わせて当社の要望に即したソリューションに仕立てられたことが成功のポイント」振り返る。
特有のニーズを満たすため、無数にあるサービスを緻密に調べ上げ、ユーザーが主導して複数のITベンダーを動かした今回の事例。購買業務との兼任担当者の執念が実を結んだ。(木村剛士)
3つのpoint
・従業員に接続設定させない分かりやすい仕組み
・安全な状態で社内システムにアクセスできる設計
・低コストですぐに導入できる使いやすさ