2010年、インテルに買収されたマカフィーのニュースはセキュリティ市場での大きな出来事の一つだった。10年後、IPアドレスをもってネットワークに接続されるデバイスが500億に達すると見込まれており、マカフィーの加藤孝博会長兼社長は「チップに組み込まれて、セキュリティは空気のような存在になる」と言う。チップにセキュリティが組み込まれれば、セキュリティビジネスにも変化が起きそうだ。
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| 加藤孝博会長兼社長 |
インテルによるマカフィー買収は、2010年8月2日に発表された。加藤社長は「株価に影響するというので、直前まで(買収の話を)知らされなかった」と事情を説明する。インテルというチップメーカーに買収され、マカフィーは100%子会社として新たなスタートを切った。同社は毎年2ケタの高成長を続けている。買収されたものの、事業運営の面では変わりなく、マカフィーの目指す「統合セキュリティ」の実現に向けて、暗号化やURLフィルタリングサービスなどさまざまな製品群を拡充してきた同業他社買収はマカフィー自身、継続する方針だ。
加藤社長は「現状、10億から20億デバイスがIPアドレスでつながっているといわれているが、今後10年で500億デバイスになると見込まれる。もうセキュリティは意識して使うものではない」と話す。スマートフォンやタブレットなどモバイル機器をはじめとし、ゆくゆくは冷蔵庫、テレビなど家の中の家電製品や、作業用のトラクターやフォークリフトなども、IPアドレスが付与される世の中が訪れようとしている。そうなった場合にユーザーに意識させないかたちで、空気のようにセキュリティを確保していく必要がある。加藤社長は、ここにこそ、インテルとのマカフィーが一緒になる大きな価値があると評価する。「いま、対前年でモバイルは100%、組み込み市場は50%成長している。時代の流れは、モバイルであったり、組み込みに動いている。そんななかで、セキュリティを担保するためにチップにセキュリティを実装するSoC(System-on-a-Chip)の方向がどんどん進む可能性がある」(加藤社長)。
インテルのチップにマカフィーが培ったセキュリティ機能が実装されれば、インテルのチップには必要なセキュリティ機能がすでに入っていることになり、セキュリティビジネスが大きく変わってきそうだ。大手のハードウェアメーカーなどに、セキュリティ企業が買収されるような大変革が起きている。今後、セキュリティビジネスのあり方は大きく変容していくものと思われる。(鍋島蓉子)