安徽開源軟件有限公司の董事長兼総経理で、安徽省馬鞍山市花山区高級招商顧問の中尾貴光氏が来日。中国のOSS、モバイル事情を軸に、中尾氏に中国でのビジネス四方山話を聞いた。(鍋島蓉子●取材/文)
契約数で携帯電話が固定電話を抜く
──中尾さんは安徽省で創業されたとのことですが、どんな都市なのでしょう。
中尾 安徽省は広くて、オフィスのある馬鞍山市は、地図でいうと南京の左斜め下です。日本の人に安徽省の話をすると、少し知っている人は「安徽省って貧しいでしょ」と決めつけられるのですが、実はそんなことはない(笑)。鉄鋼業が栄えていて、中国七大鉄鋼の一つ「馬鞍山鋼鉄」があります。その会社の社員だけで何万人もいる。地元ですごく優遇されています。
地方政府は、次はソフトウェア産業を育てようと奮起しています。日本人で安徽省で起業するのは私が初めてだと思いますが、地方政府にはお世話になっていますし、今は馬鞍山の海外企業誘致の顧問認定を受けています。

中尾貴光氏
──それで、今はソフトウェア産業の誘致をされているわけですね。
中尾 そうです。とはいえ、本業は当然誘致ではなくて、開発アウトソーシングをメインに、OSS関連、とくにLAMP(Linux Apache、MySQL、PHP)とAndroidのトレーニング、コンサルティングをしています。日本向けがメインですが、今、あまり景気がよくないので、欧米にも展開したいですね。
──中尾さんは、中国のどんなところに魅了されたのでしょうか。
中尾 中国にいるとワクワクしますね。日本にも高度成長期がありましたが、今の中国は「景気が上向いている」ことを実感できます。国の体制は共産主義にもかかわらず、誰にでも起業のチャンスがあって、失敗しても寛容。可能性が限りなくあります。
日本に帰ってきて一番最初に思いました、「静かだなあ」って(笑)。渋谷の繁華街にいても、そう思いますね。中国なんて、電車のなかでみんな携帯電話でワーワー話しています。日本の電車でも中国人が携帯電話で話していますけど、それって決して故意ではなく、単にマナー違反ということを知らないだけなんです。日本は地下鉄に乗ると、走行中は電波が届かないところが多いですが、中国は電波が届くので、ずっと話していますね。
──ほかのアジアの国々もそうですが、固定電話網より携帯電話網が充実していると聞きました。
中尾 そうです。契約数では、携帯電話が固定電話を抜きました。ユーザー数は、確か7億4000万人だったかな。普及率でいうと上海と北京はほぼ100%に近く。内陸部だと50%を割っていますから、まだまだ伸びしろがあります。安徽省も50%くらいですよ。「ブロードバンド」という言葉すらないところが結構あります。僕が内陸部に行ったときには、アナログモデムを使って何Kbpsという通信速度でした。
有線になると、上海ですら今でもADSLの2Mbpsが一般的で、それで日本円で月数千円もする。最近になって4Mbpsが出てきたのですが、光回線はごく一部ですね。当社は安徽省にありながら光回線を入れていますが、月に2万円くらいはしますし、もっと高いところもあります。
──そんなに高いんですか。
中尾 そうなんです。中国でも、今、SaaSやらクラウドやらの話題が報道されています。実際、中国のメーカーでも始めようとしている会社があります。地方都市はとくにそうですが、中国は日本以上に情報化されていない地域があるわけです。その切り札として、クラウドやSaaS、受け手側のモバイルが盛り上がってきています。
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