トップSIerのグローバル進出が活発になってきた。業界最大手のNTTデータに続き、トップ集団のITホールディングス(ITHD、岡本晋社長)が英ブリティッシュ・テレコミュニケーションズ・ピーエルシー(BT、イアン・リビングストンCEO)と戦略的提携を行うこととなった。グローバル規模のクラウドコンピューティングビジネスを念頭に置いた技術やサービス開発、営業面で協業する。野村総合研究所(NRI)も中国などでのビジネスを強化しており、トップSIerが相次いで海外進出を加速させている。
ITHDとBTが戦略提携

NTTデータは豊富な資金力を武器にドイツの有力SIerをグループ化するなどの施策を推進してきた。2013年3月期には海外での売上高を約2400億円積み増して計3000億円にする野心的な海外ビジネスの計画を立てる。対するITHDは、隣国中国への進出はあるものの、「欧米でのビジネス実績は非常に少ない」(ITHDの石井貞行執行役員)。そこで打ち出したウルトラC級の技が、世界大手通信キャリアのBTグループとの戦略提携である。BTが国内大手SIerと提携したのは今回が初めてだ。
今年2月、ITHDの岡本晋社長が英国に出向き、BTグループのサー・マイケル・レイク会長と大筋で合意。以来、およそ半年をかけてクラウド対応の技術やサービスの開発、営業面での協業を詰めてきた。提携の最大の目玉は、クラウド対応の仮想化されたデータセンター(VCD)を相互接続する構想である。ITHDは今年5月に関西の心斎橋DCを全面リニューアル。11年4月には東京都心に次世代型の御殿山DCを開業する予定であるなど、VCDを相次いで拡充。中国に設置したデータセンター(DC)などを含め、国内SIerとしては最大級のDC保有規模を誇る。これとBTが持つグローバルVCD網と相互接続することで「世界どこでも均質なITサービスを提供する」(同)ことを可能にする。

BT側からみれば、ITHDがメーカーやキャリア色がない独立系SIerであることに加え、グローバル展開する大手優良顧客を多数持っていることが魅力だ。例えば、ITHDのグループ会社のクオリカは、コマツの元情報システム子会社、AJSは旭化成の情シス子会社の出身である。VCD網を通じて日系企業の海外拠点にITサービスを提供することでグローバルビジネスに弾みをつける。ITHDとBTは向こう3年間で、5~10億円規模の大型案件を十数件受注する目標を共有。順調に進めば累計100億円程度のビジネス増に結びつく可能性があるとみる。
SIerのグローバル展開を巡っては、トップグループのNRIも中国やロシアなどでのビジネスを推進。仮想化やクラウド技術を駆使した次世代VDC網を使えば、業務システムをグローバル規模でデリバリーすることも容易になる。SIerの海外進出のハードルは以前に比べて下がっており、これを機にグローバルビジネスを拡大する動きが今後も増えそうだ。(安藤章司)